邦画と銭湯

映画を観て風呂に入った記録、ほかにも寺社仏閣巡りとか諸々。

高峰秀子

『女の歴史』(1963・東宝)

苦労ばかりの女の人生を高峰秀子が演じる。夫を戦争で亡くし、息子を事故で亡くし、夫の友人・仲代達矢の求愛を拒んで、戦後はパーマ屋を経営するデコちゃん。頼もしい友人・淡路恵子や呑気な姑・賀原夏子など女たちの連帯が救い。戦中の下町の路地裏や闇市…

『妻として女として』(1961・東宝)

大学講師(森雅之)の長年の愛人・高峰秀子が関係を清算しようと手切れ金を要求したことから起こる怨念のドラマ。クライマックスでの女同士のバトルは、スリリングな台詞のやり取りで観る者を掴んで離さない。妻と愛人に挟まれてオロオロするのみ、絶対に自分…

『ひき逃げ』(1966・東宝)

子供をひき逃げされた高峰秀子は、加害者(司葉子)宅に女中として入り込み、司の子供を殺して復讐しようとするが…。たびたび挿入される子供を殺す妄想、驚きの展開とラスト、酔って踊りまくる高峰など、シュールで意外性のある成瀬作品。横断歩道・信号・車…

斎藤明美『ふたり 救われた女と救った男』

ふたり 救われた女と救った男 (扶桑社BOOKS) 作者:斎藤 明美 扶桑社 Amazon 高峰・松山夫妻の軌跡を、当時の写真や雑誌グラビアを紹介しながら描いた薄い本。 しかしそのそっけないくらいの薄さの中に、濃厚で、二人の人間の偉大な仕事(それは映画とか…

『華岡青洲の妻』(1967・大映)

世界で初めて全身麻酔による手術に挑んだ医師・ 青洲(雷蔵)を巡るは・於継(高峰秀子)と妻・加恵(若尾文子)の異様な関係を描いた一作。嫁姑の心 情が尊敬と慈しみから嫉妬と執着に変化する様に 背筋が凍る。4Kデジタル修復でより鮮明に浮かび上がってき…

高峰秀子『高峰秀子と作家たち』

高峰秀子と作家たち 作者:高峰 秀子 河出書房新社 Amazon もちろん才能があるからなのだけれど、つくづく高峰秀子はすごい。 大女優だから、ということももちろんあるのでしょうが、文豪にこんなに愛されちゃって〜! この本は高峰秀子の文士たちとのつきあ…

『流れる』(1956・東宝)

移り行く柳橋の花柳界で新旧の芸者たちの人生が交錯する――。芸者置屋を主な舞台に、成瀬の周到な演出の下、歴代の名女優陣の演技合戦から目が離せない群像劇の傑作。住み込み家政婦を田中がきびきびと演じて見事。 (神保町シアターホームページより引用) …

『「巨匠が撮った高峰秀子」写真展』

「もしよければ」とチケットをいただいたので、大喜びして恵比寿まで行ってきた。 ところでガーデンプレイス、恵比寿駅から動く歩道(っていうんですか?)でけっこうな距離かけて行くわけですけど、おしゃれっすね。ひさしぶりにきた。最後に行ったのいつだ…

『秀子の車掌さん』(1941・南旺映画)

ある山間の田舎町を舞台に、バスの運転手と女車掌が伸び悩む客足をなんとかしようと奮闘する──。井伏鱒二の短篇『おこまさん』の映画化。数々の名作を生みだした成瀬巳喜男監督と高峰秀子はこの作品で初めて顔をあわせた。 (ラピュタ阿佐ヶ谷ホームぺージよ…

『逆境を乗り越えた大女優 高峰秀子の美学』

東京タワーで開催された、高峰秀子さんの展示にいってきました。 基本展示内容は撮影不可ということでちょっと残念。 https://www.takamine-hideko.jp/exhi www.takamine-hideko.jp 高峰さんの著作を読んだ人はわかっていると思うのですが、高峰さんは幼少期…

『永遠の人』(1961・松竹)

一人の女の数十年にわたる愛憎を描いた大河メロドラマ。夫・仲代への恨みを決して忘れない高峰秀子の鬼気迫る演技に圧倒される傑作。フラメンコの弾き語りという意表を突く木下忠司の音楽とともに、木下恵介特有の過剰なエモーションが阿蘇の大地に響きわた…

『朝の波紋』(1952・新東宝=スタジオ8プロ)

五所が立ち上げた独立プロ・スタジオエイト製作のヒューマン・ラブストーリー。高峰演じる英語が堪能な現代的なキャリア・ウーマンに訪れる、軽やかな恋の予感。 (神保町シアターホームページより引用) 監督:五所平之助 出演:高峰秀子/池部良/香川京子/…

斎藤明美 編『高峰秀子 夫婦の流儀』

高峰秀子 夫婦の流儀 (とんぼの本) 新潮社 Amazon 結婚当時、収入格差のあった高峰秀子と松山善三。なぜ「絶対にうまくいかないだろう」と思われていた二人は、うまくいったのか。 写真を交えて紹介するヴィジュアル入門書、こと新潮社のとんぼの本のシリー…

高峰秀子『コーちゃんと真夜中のブランデー』

コーちゃんと真夜中のブランデー: 忘れえぬ人びと 作者:秀子, 高峰 河出書房新社 Amazon 「俳優さんの条件として、飽きられないっていうことが必要だって言ったけど、それは個人的なことですよ、ね。それよりも俳優さんとしての一等の条件は、映画からはみ出…

高峰秀子『ああ、くたびれた。』

あぁ、くたびれた。 作者:秀子, 高峰 河出書房新社 Amazon この本に収録されている「贈り物とパーティ」を読んで、むむむ、と唸った。 苦手なことである、と高峰さんは書いている。 しかしそこは高峰秀子、熟考、そして自分らしく贈り物を贈る。 例えば、手…

高峰秀子『人情話松太郎』

人情話 松太郎 (文春文庫 た 37-8) 作者:高峰 秀子 文藝春秋 Amazon 旧作邦画を観ていると、川口松太郎原作の多いこと多いこと。というわけでどんな人なのか、川口浩(これも僕の贔屓である)のお父さん、であることしかよく知らない作家について興味津々な…

高峰秀子『コットンが好き』

コットンが好き (文春文庫) 作者:高峰 秀子 文藝春秋 Amazon やたらとここしばらく高峰秀子本を紹介しているんだけれど、それはいま、映画を観る予定がなかなか立てず、仕事の合間合間に本を読むくらいしか余裕がないからである。 高峰秀子の本のなかで一つ…

高峰秀子『忍ばずの女』

忍ばずの女 (中公文庫) 作者:高峰 秀子 中央公論新社 Amazon 俳優の演技について語っている本が好きです。 こだわりを垣間見ることができると、おおっ、と思う。 高峰秀子はさまざまなエッセイで、自分の役作りについて語っている。こちらの本は、文庫のうし…

高峰秀子『類型的なものは好きじゃないんですよ』

先日読んだ『高峰秀子が愛した男』から俄然興味をもち、高峰秀子のエッセイをまとめて読んでいる。 というわけで、この写真いいな〜ということで読み出した。 類型的なものは好きじゃないんですよ 作者:高峰秀子 河出書房新社 Amazon 生前本になっていなかっ…

斎藤明美『高峰秀子の言葉』

高峰秀子の言葉 (文春文庫 た 37-30) 作者:斎藤 明美 文藝春秋 Amazon 高峰さんがお亡くなりになって半年たったときからこの本は始まる。著者で、高峰さんの養女である斎藤さんは、高峰さんがかけてくれた言葉を反芻していく。それは高峰さん自身のスタイル…

斎藤明美『高峰秀子が愛した男』

高峰秀子が愛した男 作者:明美, 斎藤 河出書房新社 Amazon 松山善三の顔はいい。一人でいる時のなんとも愁のある表情、そして妻・高峰とのツーショット写真には、多くを語らない男がほわっと滲み出てしまう愛情が漂う。 1925年生まれ、シナリオライター(ご…

『虹を抱く処女』(1948・新東宝)

結核のブルジョア作曲家が訪問看護婦と恋に落ちる。白衣の天使そのもののように美しいが、そこはデコちゃん。「彼への気持ちは自分に酔っているだけでは?重病人との結婚は無理では?」という自分ツッコミも忘れない。実際に結核を患っていた早坂文雄(本作…