旧作邦画を観ていると、川口松太郎原作の多いこと多いこと。というわけでどんな人なのか、川口浩(これも僕の贔屓である)のお父さん、であることしかよく知らない作家について興味津々なわけです。
川口松太郎との出会いからこの本は始まる。その凄みに、高峰さんはやられてしまい、結婚を決意した時、松山善三を川口さんに見せたそうだ。太鼓判を押されて、高峰さんは結婚することに。
がむしゃらに生き抜いた少年時代。愛人は三人、妻と家族のいる家含め四軒を渡り歩いた、という、「うらやましい」よりも「ひえ〜大変そう」という感想しかでてこないようなエピソード(「先生は優しいからね。優しいのか意気地がないのか知らないけど、やっぱり優しいんだろうなあ、とにかく好かれちゃうんだから……」と高峰さん)
久保田万太郎との関係、そして梅原龍三郎の絵に対する想いなど、読みどころがたくさん。
調べると、文庫が一冊残っていた。
こちらも落ち着いたら読みたい。
「芸人はお客が一ばん大切な筈だ。聴く者がなかったら名人も上手もあるものか、」
川口松太郎『鶴八鶴次郎』からの引用である。冒頭、そして最後にこの言葉が掲げられている。
名文句です。