邦画と銭湯

映画を観て風呂に入った記録、ほかにも寺社仏閣巡りとか諸々。

成瀬巳喜男

『女の歴史』(1963・東宝)

苦労ばかりの女の人生を高峰秀子が演じる。夫を戦争で亡くし、息子を事故で亡くし、夫の友人・仲代達矢の求愛を拒んで、戦後はパーマ屋を経営するデコちゃん。頼もしい友人・淡路恵子や呑気な姑・賀原夏子など女たちの連帯が救い。戦中の下町の路地裏や闇市…

『芝居道』(1944・東宝)

弟子(長谷川一夫)の慢心を戒めるため、恋仲の女(山田五十鈴)に身を引かせ東京に修行に出す座長(ロッパ)。芸を磨いた長谷川の見事な舞台の移動撮影が素晴らしい。戦時中の作品だが、提灯行列の幻想的な美しさ、戦勝祝いの花火と4人が会話をしている部…

『舞姫』(1951・東宝)

川端康成の同名小説を原作に描く夫婦の物語。考古学者である夫と家庭内別居状態の妻。バレエ教室を営む妻は、夫と別れ新たな道を探そうとするが…。高峰三枝子が妻の心のゆらぎを見事に演じている。本作がデビュー作である岡田茉莉子は初々しくも、女優の貫禄…

『妻として女として』(1961・東宝)

大学講師(森雅之)の長年の愛人・高峰秀子が関係を清算しようと手切れ金を要求したことから起こる怨念のドラマ。クライマックスでの女同士のバトルは、スリリングな台詞のやり取りで観る者を掴んで離さない。妻と愛人に挟まれてオロオロするのみ、絶対に自分…

『ひき逃げ』(1966・東宝)

子供をひき逃げされた高峰秀子は、加害者(司葉子)宅に女中として入り込み、司の子供を殺して復讐しようとするが…。たびたび挿入される子供を殺す妄想、驚きの展開とラスト、酔って踊りまくる高峰など、シュールで意外性のある成瀬作品。横断歩道・信号・車…

『旅役者』(1940・東宝)

信州の田舎町に旅の一座がやってくる。一流だと騙っていたが無名もいいところ。馬の足役の藤原釜足が出演拒否し、本物の馬を出したら大受けするが…。「後ろ足5年、前足10年」という馬の足芸を否定され、酔っぱらって馬に襲い掛かる釜足。ほのぼのとしながら…

『女人哀愁』(1937・P.C.L)

金持ちの家に嫁ぎ、家族に舐められ女中扱いされる嫁・入江。耐える入江と、恋愛結婚したが出戻ったわがまま娘との対比、家庭をサスペンスの現場として演出する手つきも冴えている。カメラが動き、扉が開閉し、顔のアップになる。ラストで切口上述べる入江の…

『鶴八鶴次郎』(1938・東宝)

鶴八(山田五十鈴)の三味線、鶴次郎(長谷川一夫)の新内で大人気の二人。芸への誇り、互いへの尊敬と嫉妬心が混ざり合い関係がこじれ、ついに決裂するが…。横に並んで同じ方向を向くことでしか関係性を結べない二人を仲立ちする藤原釜足も素晴らしい。長谷…

『三十三間堂通し矢物語』(1945・東宝)

春爛漫の京都。紀州家の家臣・和佐大八郎が8000本を超える通し矢を射抜いて日本一になるかどうかで街はにぎわっていた。5年前、大八郎の父は尾州家の家臣・星野勘左衛門に破れ割腹。宿屋小松屋の女主人・お絹は、先代の無念を晴らすため必死の思いで弓術を習…

『流れる』(1956・東宝)

移り行く柳橋の花柳界で新旧の芸者たちの人生が交錯する――。芸者置屋を主な舞台に、成瀬の周到な演出の下、歴代の名女優陣の演技合戦から目が離せない群像劇の傑作。住み込み家政婦を田中がきびきびと演じて見事。 (神保町シアターホームページより引用) …

『あにいもうと』(1953・大映東京)

東京近郊、多摩川べりの田舎町。奉公先で身篭り暇をだされた長女・京マチ子、粗野だが家族想いの長男・森雅之、真面目で素直な末妹・久我美子──。愛憎入り混じる深い兄妹愛の世界を描いた、室生犀星の同名小説二度目の映画化。 (ラピュタ阿佐ヶ谷ホームペー…

『お國と五平』(1952・東宝)

夫の仇討ちのため復讐の旅を続ける武家の後家と奉公人。いつしか二人の間には主従を越えた愛情が芽生えるが、そんな折に目指す相手が現れてしまう──。谷崎潤一郎の有名戯曲を映画化。お國に妖艶木暮実千代。 (ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用) 監督…

『噂の娘』(1935・P.C.L)

経営難の老舗酒屋を舞台に、親の決めた縁談に応じる古風な姉と、対照的に奔放な妹とのすれ違いを描く。1930年代の銀座の街並みや水上バスの風景なども貴重。 (神保町シアターホームページより引用) 監督:成瀬巳喜男 出演:千葉早智子/梅園龍子/伊藤智子/…

『乙女ごころ三人姉妹』(1935・P.C.L)

浅草の歓楽街を舞台に、貧しさから母仕込みの門付芸で生計を立てる姉妹の儚い青春を描く。成瀬初のトーキー作品で、浅草寺ロケなど映し出される街の活気も感動的。 (神保町シアターホームページより引用) 監督:成瀬巳喜男 出演:堤真佐子/梅園龍子/細川ち…

『秀子の車掌さん』(1941・南旺映画)

ある山間の田舎町を舞台に、バスの運転手と女車掌が伸び悩む客足をなんとかしようと奮闘する──。井伏鱒二の短篇『おこまさん』の映画化。数々の名作を生みだした成瀬巳喜男監督と高峰秀子はこの作品で初めて顔をあわせた。 (ラピュタ阿佐ヶ谷ホームぺージよ…

『驟雨』(1956・東宝)

結婚から4年、子供のいない夫婦に倦怠期が訪れている。何の予定もない日曜日、ケンカをしているわけではないが、二人の会話に思いやりの言葉はなく、互いの行動にケチを付け合うばかり。ある日、新婚旅行から戻ったばかりの文子の姪・あや子が訪ねてくる。夫…