邦画と銭湯

映画を観て風呂に入るブログ

『朝の波紋』(1952・新東宝=スタジオ8プロ)

五所が立ち上げた独立プロ・スタジオエイト製作のヒューマン・ラブストーリー。高峰演じる英語が堪能な現代的なキャリア・ウーマンに訪れる、軽やかな恋の予感。

神保町シアターホームページより引用)

 

監督:五所平之助

出演:高峰秀子/池部良/香川京子/岡田英次/上原謙/吉川満子

 

 昨年神保町シアターの企画「文学と恋愛ーー文豪たちが描いた「恋ごころ」の情景」のなかの一本。

こちらは原作は高見順高見恭子のお父さんである。って高見恭子もみんな忘れたか。プロレスラーで議員になた馳浩の……余計にわからないか。とにかく偉い人。駒場日本近代文学館設立に奔走された、とにかくとにかく偉い人です(しつこい)。

 

ところで池辺良の顔を観るたび、ある現役で活躍されている俳優さんを思い出す。ほかにも、あるスターを見ているうち、「あ、面影が××に」と思うことがある。やっぱり、芸能界ってそういうもんなのかなと思う。どういうもんかなというと、昔人気だった人となんとなく似ている(気がする)人は、やはり人気になるのだ。

それじゃあまるで、演技とか性格とかスタイルが似てたら売れるor偉い人がプッシュしてくれる、ってわけでもないだろうけど。いや、もしかしてだけど大衆(と呼ばれるなにか)からの要請なのかも。

 

この作品の池部良は半人前、なんだか冴えないやつ扱いされているがどこか飄々としている男である。そして高峰秀子は、職業婦人としてやりて。上司に少々疎まれている。そんな二人が、高峰の家で預かっている少年を介して知り合う。そして、二人の勤めている会社同士で、ライバル関係にあったりするのだ。

少年の飼っている犬はよく人の靴を盗む。看板に靴をぶら下げながら歩く池辺、なんだか愛おしい。図体でかい男と少年、なかなかの絵面。

最後はやっぱりハッピーエンド。高峰の同僚の岡田英次も高峰のことを愛してはいるが、いかんせんさりげなーく嫌なやつだったりするし、高峰と池辺は仕事で反目しながらも(というか高峰の方が勝手に)、最終的には池辺の優しさに、好感以上の感情を抱くのであった、と。

この作品の池部良、まあ生活に苦労していないという部分もあるんだろうけど、とにかく、人をほっとさせる。こういう感じの芝居も、なかなかのもの。

 

そして岡田英次以外にも、池辺の大学時代のボート部の先輩に上原謙、少年が家出した先のサレジオ学園のシスターに香川京子とめちゃくちゃ豪華。

戦争で傷ついた、失ったものを乗り越え、人々はあくまでも明るい方へと進んでいく。