きたはら邦画

午前0時の旧作日本映画案内

『ファンキーハットの快男児』(1961・東映)

ニュー東映ホープ千葉真一の主演作!官庁ビル建設に絡まる贈賄汚職が幼児誘拐事件を呼び、若い探偵が謎を追って活躍する!深作欣二監督によるスリルとサスペンス漲りユーモアを織り交ぜた青春痛快アクションドラマ!

(Prime Videoより引用)

 

監督:深作欣二

出演:千葉真一/花澤徳衛/中原ひとみ

 

気軽な気持ちで観たら、とんでもなく面白かった。

お父さんが探偵、の千葉ちゃん、ナンパした中原ひとみは株に夢中。

そんななか、某社長のお子様が誘拐された。

株情報を聞き出そうとやってきた中原は犯人と誤解されてしまう。

そうこうしているうちにご子息は帰還。

身代金が重要だったのではない、どうやら株の買い占めをしているやつがいるぞ?

 

かなり軽薄な千葉真一がかわいい。そしてやっぱり動きはキレッキレ!

『惜春鳥』(1959・松竹大船)

若者達の友情や挫折を描いた名作の多い山田シナリオを思わせる、木下脚本の青春群像劇。顔を揃えた気鋭の若手俳優達も素晴らしい。

神保町シアターホームページより引用)

 

監督:木下恵介

出演:津川雅彦/川津祐介/小坂一也/山本豊三/石浜朗/有馬稲子/佐田啓二

控えめにいって、最高だった!

車内から始まる。川津と佐田は田舎に帰るところ。東京で川津は女がらみで問題を起こし、佐田もまた芸者との駆け落ちが失敗した。

川津が帰ってくると、仲間たちが集まってくる。五人はそれぞれの暮らしや悩みがある。

あるとき川津がそれぞれに金を貸して欲しいと持ち出すが……。五人の青春グラフティ(一部ではBL的、ということらしい。まあこいつら、なんでか風呂場でもくっつきあってるしなあ)と、佐田と芸者・有馬の物語が交差する。

川津は実は東京で詐欺に手を染めていた。一番慕っていた足が不自由な山本が、警察に捕まる前に自首してもらいたくて、街を足を引き摺る姿に泣く。

貧乏士族家系の石浜に婿養子の話、津川の決心、川津が自分の大切な腕時計を盗んだことに気づき涙する小坂。それぞれが最高なのだ。

白虎隊の剣舞をかつてした頃より大人になった五人。ほんとうの大人になる季節を迎えようとしている。

ああ、ほんとうに、最高だった。

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『藍より青く』(1973・松竹大船)

昭和19年の天草で、校長の娘と徴兵間近の漁師が愛を貫く。山田が手掛けたNHK連続テレビ小説を原作に、森﨑流で描く戦時下の純愛。

神保町シアターホームページより引用)

 

監督:森﨑東

出演:松坂慶子/大和田伸也/佐野浅夫/赤木春恵/尾藤イサオ/三國連太郎

困った。最高だった。

冒頭から謎の男たちの寒中水泳対決! なぜ? と思ったら、松坂慶子のため!?

漁師の頭領の息子大和田は松坂を愛していた。相思相愛である。しかし大和田は半年後戦地へ。結婚を躊躇するも、松阪の真剣な想いにふたりは結婚を決める。

しかし問題は松阪の父、三國である。どうしたってうんといわない。松阪の家出の果て、二人の結婚を認めることになるが、しかし大和田は再び、「結婚していいのか」の悩む。

大嵐の日、海へ一人出てしまう大和田。無事なのか? 夜明けに松坂は、大和田の船の音が聞こえる、と走るが。

 

もともとが朝ドラということで、全員憎めない。天草の漁師たちの友情、大和田の朴訥とした魅力、そして松坂慶子!!

若者たちの兄貴分の田中邦衛が最高である。それ以上に三國が!

妻を早くになくした三国は、松坂が未亡人になってしまうのがしのびないのだ。そして戦地に若者を送り出すときの言葉と想いの矛盾に引き裂かれている。

松坂が家出したとき、怒鳴り込みにいく三國、最高。そもそも完全な人間でない感じ、飲んでだらしなく横になったり、山田太一の作ったキャラクターたちは、みんな、弱くて、悲しくて、身近だ。

 

こうなってくると朝ドラも観たい。あらすじを見ると、え、未亡人になっちゃうの!?

 

『歌え若人達』(1963・松竹大船)

学生寮で暮らす青年達のままならない日常――。山田が自身の経験をもとに描き上げた苦々しい青春ドラマを、師匠の木下が軽やかな喜劇調で映画化。

(神保町シアターホームページより引用)

 

監督:木下恵介

出演:松川勉/三上真一郎/津川雅彦/山本圭/川津祐介/倍賞千恵子/岩下志麻

 

いやーめちゃめちゃ面白かった。

大学生四人のさまざまな想い、なんだか絶望している松川、チャラい川津、実家の期待に押しつぶされそうな三上、そしてウザい山本(笑)。

 

松川がビルのガラス拭きのバイトをしているとき、雑誌の表紙にスカウトされ、そのままテレビドラマの主役に抜擢!

なんだかわけのわからぬまま人生がひらけていく松川。川津のほうはわりと裕福で順風満帆だったはずなのに、家族が破産・そしてガールフレンド達には振られてしまい。

ラスト、友人の成功を素直に祝える成長と、生きることの厳しさを予感しながらも笑顔の一同。絶品の青春映画だった。

 

にしても木下恵介のユーモア(学生寮でやたらドアにぶつかったり、松川の掲載された週刊誌がぞんざいな扱いを受けてたり)、山田太一のセリフのキレと、構成のうまさ(悩むやつは高いところからものを落としたがる! 最高!)。

 

なんか、いいな、生きてるってとか思っちゃったり。これってなかなかすごいことじゃないか? どう思わせるなんて。

 

そうそう、野心ある女優役の岩下志麻さん、かわいかったです! 松川勉の自然? 棒読み? 具合とあいまって。

 

Youtubeではレンタルされてるみたい。ぜひ!

 

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『キネマの天地』(1986・松竹)

昭和初期の蒲田撮影所を舞台に、映画館の売り子からスター女優への階段を駆け上がる娘とその父との絆、そして活動屋たちの情熱を描いた感動巨篇。

神保町シアターホームページより引用)

 

監督:山田洋次

出演:中井貴一/有森也実/渥美清/倍賞千恵子/すまけい/美保純/笠智衆

 

神保町シアターの企画『映画で辿る 木下恵介山田太一』である。


にしても、そもそも脚本に井上ひさし! 山田太一! 朝間義隆! 監督の山田太一も入っている!

松竹の記念映画なだけあって豪華〜(というか渥美・有森の隣人が倍賞・前田吟て、『寅さん』じゃん。というかセルフパロディー、さすが山田洋次)。

そういや続編(?)を井上ひさしが戯曲書いてました。我が家には『井上ひさし全芝居』(全集ね)があるんだが、未読。

 

さて、映画館で働く有森は見そめられ、松竹の大部屋俳優に。助監督で繊細、というかナイーブな中井貴一となんとなくいい感じに。

しかしすれ違い、中井が捕まってしまう(逃げている大学の先輩の巻き添えに)などなどさまざまな事件、そして有森の出生の秘密、などなどとにかく盛りだくさん。

ラスト、有森の初主演映画を観ながら渥美は……そしてそんなことも知らずに有森は松竹のイベントで歌うのであった。

いや、まじで舐めてました。泣いちゃった。山田洋次に泣かされるのって、なにかひっかかるというか、俺も情緒に流されちゃうな〜とか思っちゃうとこもあるわけですが、そんなことおかまいなしに、名作でした。

映画の現場の男たちの熱さも最高。

しょうもない映画を作っていることに対する屈折を中井も俳優たちも感じている、しかし、観客は少ない賃金の中で娯楽を求めに映画を観にやってくる。

お客さんたちの想い。

く〜っ。

 

でも一番面白かったのは、小津安二郎みたいな役(笑)の岸辺一徳。我々の想像する小津的現場でした。

 

 

 

『肉屋と義母 うばう!』(2005・ネクストワン)

80年代にロマンポルノで活躍した三東ルシア。一時期芸能界を引退していたが、2003年緊縛写真集を出版し復帰。本作は、復帰後唯一の映画出演作。大学講師役の三東ルシアが逞しい肉屋の男に惹かれていく様が官能的に描かれる。

ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)

 

監督:松岡邦彦
出演:三東ルシア/しのざきさとみ/青山えりな/徳原晋一/那波隆史

 

さて、こちら成人映画だししかも2005年の作品なのですが、ラピュタ阿佐ヶ谷で観ましたので、書かせていただきます! というか、これがなかなか。

大学教授である主人公は、夫と前妻の息子と三人暮らし。息子がガールフレンドを連れてきて、なんとなく家庭はうまくいっている、のだが!

夫との性生活は淡白なものであった。

そんなとき、肉屋の軒先で雨宿りをしたとき、奥で肉屋の年増女と男が濃厚な、、、を目撃!

性への渇望から、主人公は再び肉屋を訪れ、そして……。

この肉屋の男がまたアグレッシブで「俺は満タンだから」などとめくるめく、、、。

まあお察しください。

嫉妬した肉屋の女房が、義理の息子をレイプしたり、もうこんな関係は、と断ち切るはずが、大学にまでやってきた肉屋、そして教室で、、、。

ラストまさかの妊婦姿で肉屋から出てくる主人公。

彼女の望んでいたものは、なるほど。

『義母の長襦袢 淫らな匂い』(1996・プロダクション鷹)

ノーパン喫茶で一世を風靡し、1984年ロマンポルノ『イヴちゃんの花びら』でスクリーンデビューしたイヴ(神代弓子)は、エクセスでも15本の最多主演数を誇る。本作では、珠瑠美監督とのコンビで、若きイヴの姿が堪能できる。

(ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)

 

監督:珠瑠美
出演:神代弓子/青山あずさ/林由美香/加藤健二/竹田雅則

 

ラピュタ阿佐ヶ谷のレイトショー、『庶民の夢と欲望に寄り添った、エクセスフィルム35年の歩み』である。

 

エクセスフィルムの歴史は、日活ロマンポルノの終焉から始まった。当初は、成人映画の配給チェーンを引き継ぐ子会社としてスタートし、日活の流れを汲んだドラマ重視の映画を作るが、程なく、勢いを増すアダルトビデオへの対抗策として、映画の最初から最後まで、とにかく“カラミ”で押し通すという制作方針を打ち出す。この流れの中で、新田栄や浜野佐知、北沢幸雄、坂本太といったベテラン監督たちが、作品を乱打していった。 AVの人気女優をスクリーンに登場させたのもエクセスが先駆けであった。最盛期には、ピンク映画の出演料としては、当時破格の200万〜300万円のギャラで人気AV女優をキャスティングし観客を魅了した。エクセス映画のもう一つの特徴として上げられるのが女優の“初脱ぎ”重視である。各制作プロダクションには新人女優の発掘が求められ、AV女優であってもピンク映画には初出演の女優が主役を飾った。この事は、後に実力のある主演女優を育てられなかったとの反省も生むが、実に多彩な女優がエクセス映画の主演を飾った。今回は、エクセス映画の中でも女優が輝きを放ち、魅力的な作品をピックアップした。庶民のささやかな夢と欲望に寄り添った映画群がここにある。

 

ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)

 

うーむ、旧作邦画ブログなわけだが、もろ成人、ロマンポルノのロマンの部分抜けちゃってるし、紹介すべきかいなか、とちょっと考えたんだけど、面白かったんでやっぱ紹介します。でも画像はありません!

 

こちら改題は『義母昇天 家庭内SEXとは?』である。なんかすげえ。直球すぎだ。タイトル通り、ラストは義理の母と息子の…である。

制欲旺盛で何度も再婚しているエロ夫、そして結婚してしまった妻、そして家に再び戻ってきた義理の息子の三人が中心なんだが、とにかくこの人たち、大変。大変、ですますのもなんだけど。

お手伝いさん(林由美香さんがかわいい!)、そして元嫁とそのナントカフレンドなどなど、様々な人々がこの短い時間内で、くんずほぐれずしております。

逆にいま( 2024年)に観ると、面白すぎだろ、って感じである。いやーすごい。息つく暇なく濡れ場!

最後、夫が帰らない夜に義母と息子が、となるんだけど、まあ、息子が悶々としているのはわかるけど、美しい義理の母にそこまで執着するかなあ、とかもちょっと思ったり。

美しすぎるから、というか、夫も妻の痴態を写真に撮ろうとするし(しかし夫、元嫁と関係を持ってたりするんだが)、神代さんが美しすぎるから、ということである。

すべてのエロってそういうものかもなあ、とぼんやり思った。

 

ほら、団鬼六のSM小説って、男が責めれば責めるほど、女が美しくなる、という倒錯だったりするわけですからね。

とりあえず、このラピュタの企画を今後もおっかけて、考えてみようと思う。

 

にしても、ピンク映画って、ピンク映画館で観てみたいと思って入ると、邪魔が入ってじっくり観れなかったりするんですよね。前に京都で一度入った時に、ちょっかい出されまくって、イラついた。(詳細はここではやめとくけど)

でもやっぱせっかくこんなブログやってるんだし、ピンク映画館レポートもいずれしておきたいところ。

 

(ちょっとばかり毎日更新が難しくなりまして、今後は週3ペース、調子に乗ったら多く書いていきます!)

 

 

『自殺を売った男』(1958・松竹)

宝石店の社長秘書と情婦は、ヤク中で自殺常習犯のチンピラ・田村高廣と売り上げを横領した部下・片山明彦を使って死体入れ替えのトリックを思いつくが…。「自殺を売ってくれないか」で始まる宝石横領完全犯罪の顛末。気の弱い二人の男が事件の鍵を握る。大下宇陀児原作、高橋治脚本のクライム・サスペンス。

シネマヴェーラ渋谷ホームページより引用)

 

監督:堀内真直

出演:田村高廣/高千穂ひづる/高野真二/泉京子/片山明彦/渡辺文雄/有沢正子/諸角啓二郎/十朱久雄/永井達郎/須賀不二男

とにかくクール、なのにとぼけている。なんか悪いやつの悪さがなぜかクスリと笑ってしまう。

そもそも主人公がヤク中である。なんじゃそらって話である。

そして金をやるから一年死んだことにしておいてくれ、と持ちかけられる(ちなみにオープニングが呼び止められて『自殺を売ってくれませんか?」「えっ」って感じかっこいい)。

金がない、付き合った女に店を持たせてやりたいと、承諾してしまうんだが、そもそもが宝石店で働いていた二人が、「部下を脅して宝石を盗ませ、そいつを殺す。しかし実はべつのやつが死んだことにして、警察にはまだ部下が生きていて逃げていると思わせる」というなんだか非常にめんどくさい(笑)事件なのである。

裏切りあり、愛あり、とくに後半のピンチの数々は手に汗握る。

しかしラストはやはりヤク中、身体から薬を抜くために縛られてる(笑)。

 

内容はハードなのに、なぜか愛おしい。

 

 

『濹東綺譚』(1960・東京映画)

東京の向島にある私娼窟・玉の井を舞台に、一途な娼婦(山本)と妻子ある中年男との儚い恋を描いた文芸作品。今も根強い人気を誇る荷風の代表作の映画化。艶やかな魅力の山本が演じた素朴で愛らしいヒロインは、見る者を虜にする。

神保町シアターホームページより引用)

 

監督:豊田四郎

出演:山本富士子/芥川比呂志/新珠三千代/乙羽信子/織田政雄/淡路恵子

 

小説のときも、いいな、と思ったのが二人の出会いのシーンで、雨が降って男の傘にひょいと女が入る。

そしてそこから物語が始まる。

男には家族がいて(しかし夫婦仲は非常〜に面倒な話になっている。金も絡んでいる)、女は家族のために身体を売っている。

そんな二人の関わりは、なぜか清らかだ。どろどろしてるはずなのにね。

実は女の稼いだ金は実家に渡っていなかったこと、そして病いが、男の方も妻との対決があったりと、どうしたって二人一緒になることはできない悲しみ。

にしても新しい娼婦たち(岸田今日子がなかなかどうして!)のある意味風情のなさからも表れているが、時代はどんどん変わっていくのであった。

神保町シアターで観たとき、平日だってのに満員寸前。山本富士子人気アンド作品が配信されてなくてレアこともあるんでしょう。

観ておいてよかった。

 

 

『背くらべ』( 1962・松竹)

女手ひとつで二人の息子を育てる乙羽信子。兄の川津は弟をどうしても東京の大学に行かせたいが…。工場経営者の叔父に呼ばれて上京した川津は、ストライキで叔父と対決する労働者達を見る。教育格差、地方と都会、母子家庭と貧困、労働者と資本家の問題は今こそリアル。木下恵介企画、山田太一脚本による秀作。いたたまれず帰ってきた川津と常田富士男の友情に泣く。

シネマヴェーラ渋谷ホームページより引用)

 

監督:大槻義一

出演:川津祐介/島かおり/石川竜二/田中晋二/乙羽信子/常田富士男/山崎猛

そういや2024年2月のシネマヴェーラ渋谷は、『日本の映画音楽家伊福部昭・木下忠司』でありました。

にしても、山田太一である。セリフの一つ一つが最高だったのだ。ほんとは弟でなく、自分が東京にいきたいお兄ちゃんが、親戚の会社に勤めることになるも、ストの真っ最中。

労働者たちと立ち向かうことになり、逃げ出してしまう。

あるとき敵対した一人が家に訊ねてくる。そのときの「きみはいい人だと思う」という言葉に、しびれる。

山田太一はすごい。

 

にしても、これは「俺のかあちゃん最高」映画なのだが、兄弟愛も最高にせつなく描かれている。

冒頭、隠れて弟がバイトをしているのを見つけ、街を兄弟が自転車でダッシュするシーン。

映画のロケ(戦国時代! の合戦)でエキストラのアルバイトをしているシーンも楽しい。

 

母ちゃん最高で、兄ちゃん最高映画なのだ。