きたはら邦画

午前0時の旧作日本映画案内

『永遠の人』(1961・松竹)

一人の女の数十年にわたる愛憎を描いた大河メロドラマ。夫・仲代への恨みを決して忘れない高峰秀子の鬼気迫る演技に圧倒される傑作。フラメンコの弾き語りという意表を突く木下忠司の音楽とともに、木下恵介特有の過剰なエモーションが阿蘇の大地に響きわたる!

シネマヴェーラ渋谷ホームページより引用)

 

監督:木下恵介

出演:高峰秀子/佐田啓二/仲代達矢/石浜朗/乙羽信子/田村正和/藤由紀子/加藤嘉

いやー、面白かった。マジで大河!

佐田啓二が戦地から帰ってくるのを待つ可憐な高峰。

そんなとき地主の息子・仲代が足を負傷して帰ってくる。そして仲代は、高峰を……。

佐田が帰ってきても、高峰は会おうとしない。無理やり会い、一緒に逃げようとするも、約束の場所に佐田はこず、去っていってしまう。

高峰は仲代を結婚することに。あの襲われた時にできた長男を高峰は愛せず、再び戦争に行ってしまった佐田の嫁・乙羽がやってくる。

 

と前半だけでもえらいこっちゃなのに、後半は長男の自殺、高峰の娘と佐田の息子が駆け落ち、次男はアカとなってしまい、と怒涛の展開。

 

ラスト、残りわずかな命となった佐田の元に、子供たちが孫を連れてやってくる。

最後の高峰と仲代の対決。夫婦は全てを乗り越えることができるのか?

ラスト、びっこで歩いていく仲代の姿、泣ける。

 

畦道を村の人々が長男を探すのに駆け回るシーンがすごい。とにかく映像のひとつひとつがキレッキレ。

 

『風の中の瞳』(1959・松竹)

赴任早々から遅刻した中学教師の田村高廣と3年生達の1年間。進学高狙いの子も、修学旅行の費用がない子もいる中、事故が起こり…。学級会でハキハキ手を挙げ、「一生、友達だ」と誓い、山に行けば「ヤッホー」と叫ぶ生徒たちの良い子ぶりに少々ビビるが、心に抱えきれない悩みを持ちながら成長し巣立っていく姿には感動するしかない。

シネマヴェーラ渋谷ホームページより引用)

 

監督:川頭義郎

出演:田村高廣/有沢正子/平山芙美子/石川竜二/富永ユキ/坂井重男/桜むつ子/北竜二/奈良真養/永田靖

いまは懐かし学研の「中三コース」連載小説が原作である。ちなみに僕が中学生のころにはあったようななかったような。旺文社の「中○時代」もあったかな。なんか「高校合格」って高校受験雑誌はあったような。

そういえばいまって「螢雪時代」(大学受験雑誌)ってあるの? もうないのか?

学年雑誌って、やっぱあったほうがいいよな〜。楽しいじゃん、見返すの。

さて、健全な学生向けの小説だからか、めちゃほがらか。いや、俺もこんな先生に教わりたかった(笑)。

山猿先生と生徒たちにあだ名つけられてしまう、生徒に人気な田村。

生徒たちは、高校受験、受験できない者、友情に恋に、修学旅行に山登り(そして大変なことに!)と一年をめいっぱい楽しんでおります。

ラスト、高校に行かず就職することになった少年も、地道な努力実り、職場から定時制に通わせてもらえることに。

高校を落ちて自殺をしようとしても、ちゃんと助けがある。

先生がピンチなときは生徒たちが押しかける。

なんとまあ、いい話。

同時期にやってる映画たちと並べたら、こっちのほうが異常である。

でもなんか、この非現実的なくらい爽やかな世界、羨ましい。

もうこの季節も、そしてこんな人たちも、現代にはいないのだ。いるかもしんないけど、こんな「場」にいることはないんだろうな。

『十七才の逆襲 暴力をぶっ潰せ』( 1960・第二東映東京)

死刑囚の息子で孤児院育ちの「ジェットのサブ」は十三年前に仕組まれた恐るべき暗黒街の罠を発見。単身悪に立ち向かう──。主人公と同じ十七歳の松方弘樹が主演デビュー。新鮮な魅力をスクリーンいっぱいに叩きつけた。

ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)

 

監督:日高繁明

出演:松方弘樹/北原しげみ/波島進/梶すみ子/菅井一郎/松本克平/佐々木孝丸/小林重四郎/本郷秀雄

 

いや〜!

松方弘樹って、松方弘樹って!

 

かわいいな(笑)。

 

かなり素直な芝居で、若さ炸裂! ってかんじだ。

姉と二人暮らしのバイク乗り松方は、クリーニング屋の兄貴のかっこよさに弟子入り志願、その妹と恋をするのだが、

そこに姉の勤めるバーでの麻薬騒動がからみ、兄貴と姉さんができちゃうし、組織の本当の悪は!? という展開。

 

もう一回言っとくけど、かわいいな(笑)。

これが後々、芝居っけたっぷりの俳優になるのかあ。

ラピュタ阿佐ヶ谷で観たんだけれど、松方弘樹のある意味棒読み芝居に笑いの声。

みんな謎に保護者みたいな目線になっているのが新鮮でした。

 

なんかケンカのシーンもまるで振り付けみたいな感じなんだけど(笑)、それもまた、なんかいい。

 

 

 

『裸の太陽』(1958・東映東京)

ある田舎町の機関区。カマ焚きの青年・江原真二郎女工丘さとみというカップルを中心に働く若人たちの力強い息吹を描いた真夏の二日間の物語。家城巳代治監督のきめ細やかな生活描写が光る、青春映画の名篇。

ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)

 

監督:家城巳代治

出演:江原真二郎/丘さとみ/中原ひとみ/仲代達矢/星美智子/高原駿雄/山形勲

ラピュタ阿佐ヶ谷で2月に開催されたのはこちら。

OIZUMI 東映現代劇の潮流2024

太秦東映京都撮影所が時代劇を次々と送りだす一方、主に現代劇を手がけた大泉の東映東京撮影所。良質なヒューマンドラマに洒脱なコメディ、スタイリッシュなサスペンスや暗黒街活劇、歌謡映画など。
ご好評をいただいた2015年の「OIZUMI 東映現代劇の潮流」、2016年の「OIZUMI 東映現代劇の潮流II」に続き、第3弾となる今回は長らく上映機会の途絶えていたレア作が多数。職人技がキラリと光る、多種多様な東映東京作品をお楽しみください。

ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)

 

機関車のカマ焚きの江原は彼女と一緒に結婚資金十万円を目標に貯金している。明日は海にいく約束をしていて、水着を買いに行くところ。

そんなとき、仲代達矢から金を貸してくれと言われる。

せっかく貯めた貯金を貸してやり、彼女の方は機嫌が悪い。彼女だって妹から貸してくれといわれていたけれど拒否していたのだ。

街にでて、険悪ムードであったけれど、安売りの水着を手に入れ、ちょっとキスなんてしちゃっていい感じ。

しかし、会社から仲代の代わりに翌日カマ焚きをしてくれといわれてしまう。

あわや事故、というピンチを乗り越え、機関士のお子さんも無事に産まれ、仲代の借金の理由は実は好きだった女性の旦那の手術代のためだったと知る。

愉快な仕事仲間たち、素晴らしい女性、そして若さ。

すべてがきらきらしている。

最後、海に行けなかったからと、夜のプールに忍び込むシーンが好きだ。

なにも損なわない。

ぜんぶ、ある。



『春らんまん』(1968・東宝)

水木洋子脚本×吉村公三郎監督の大映作品『婚期』のテレビドラマ版を、東宝の豪華女優陣で再リメイク。千葉としては『沈丁花』の流れを汲む結婚をめぐるホーム・コメディである。家業を継いだ兄とその嫁、小姑三姉妹の結婚や恋愛が陽気で賑やかに描かれる。

ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)

 

監督:千葉泰樹

出演:新珠三千代/司葉子/星由里子/白川由美/宝田明/森雅之

千葉泰樹特集の大ラスである。

それにしてもこの企画、マジで宝田明充といいますか。たいへん捗りました。

で、こちらの宝田明は、両親を亡くし、頑張っていたら婚期を逃した長男。新珠を見初め結婚をするのですが、実家にまだおる司と星は気に入らないったらない。というわけでいたずらというにはハードすぎるいびりをかますわけである。

で、宝田のほうも、女房は実は俺の前に男を知っていたのではないか(実は新珠が夜の営みを本で勉強していたのですが)とか疑ったり、そもそも以前から愛人関係の草笛がいたりと荒れまくり。

一度は家を出たものの、お互い仲直りしたい二人。誤解(どっちも病気という嘘の連絡をしてしまったり)で相手のほうに向かうのだが。

 

にしても冒頭が司のお見合いシーンから始まるのだが、こちらもオチがついている。

満足度100パーセント。

幸福とはいいものだ。

 

『渡る世間は鬼ばかり ボロ家の春秋』(1958・松竹)

ひょんなことから多々良純の家に下宿することになったヴァイオリニストの佐田啓二。ところが多々良が姿を消し、彼から家を買ったと主張する者たちが次々乗り込んできて…。佐田の恋人・有馬稲子が下宿代をトイチで貸したりキスの代金を要求したりとドケチぶりを発揮。小山は高校の校長の元二号で家を買った一人。出演者が豪華すぎる梅崎春生原作の一本。

シネマヴェーラ渋谷ホームページより引用)

 

監督:中村登

出演:佐田啓二/有馬稲子/小山明子/日守新一/三井弘次/多々良純/三好栄子/瞳麗子/桂小金治

ノーと言えない男、佐田啓二

佐田啓二がまたいい男で、他の男たちと顔の作りが違うのだが、そこが「ダメなやつだな〜」と思わせる。

というのも、出てくる連中全員、生命力というか、ガツガツいきすぎ!

電車でスリを見つけ、捕まえてやったら、酒を飲もうと誘われてあれよあれよとたかられて(スリをされるのは善良な人ばかりではないのであった)、家がない? だったらうちに空き部屋があるから住めばいい、と誘われ、入居したら!

家の主だった男は妻と子供を残し失踪、しかも家の権利書をいろんな連中と取り交わしていた。

というわけで権利を主張する連中どもとの共同生活に。

金がないからヴァイオリン教室を開いたら、金をよこせとせびられる。

彼女は小銭を貯めてる教員に惚れ込む(というか金に)。

校長の二号は家を手に入れようと暗躍。

最後、家を狙い追い出そうとする中華料理屋の男たちとの大乱闘!

俺たちのボロ家は誰の手に、と思ったら火事!

それぞれが、いちおうなんとなく次を目指していくことができてハッピーエンド。

キスしたら金をよこせという恋人も、今回ばかりはタダ。

泣き笑いユーモアものの名作である。

 

『みれん』(1953・東京映画)

瀬戸内晴美(寂聴)の短篇連作集『夏の終り』を映画化した文芸作品。映画に先立ち、同年、TBSでドラマ化されている。妻子ある小説家の小杉は愛人の知子と不倫関係を八年も続けている。ある日、知子の前に昔の恋人が現れ、小杉との関係は亀裂を生じはじめる……。

ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)

 

監督:千葉泰樹

出演:池内淳子/仲代達矢/仲谷昇/乙羽信子/西村晃/沢村貞子/岸田今日子/加東大介

そういえば『夏の終り』は満島ひかりで映画になっていました。

にしてものっぴきならない状態、というが濃厚。池内は仲谷の嫁、岸田今日子のことが夢にでてくるし。飲み屋では友人たちに大見栄を切るものの、どうしても気になってしまう。

仲谷は池内と嫁の家を往復している。

そんななか、かつて医者と結婚していたときに出会い、不倫の果て別れた仲代達矢と再会する。昔の輝きに満ちた青年の面影も、生活でくすんでいる。

仲谷を中心にした、池内と妻

池内を中心にした仲谷と仲代

というダブル三角関係状態に。

どんどん追い詰められ、そして仲谷と別れることを決心するわけだが。

最後旅先で、中年男が事故死した、という話を聞いて駆けつける池内。

それは仲谷ではなかった、けれど。

かつて仲谷と一緒に歩いていたとき、仲谷は缶を蹴っていた。

最後、池内も蹴る。

缶を蹴りながら、どうしようもなく忘れらない相手のことをぼんやり考えている。

この「缶蹴り」がすごい。

ああ、海の家での別れもよかった。

そうそう、仲代との出会いの選挙カーの休憩シーンも。

好きな場面がたくさんあって、困った。

 

 

『痛快なる花婿』(1960・松竹)

紡績会社の営業の石浜と隣家の大泉滉は、新製品販売に失敗し上司に叱責される。ところが石浜を情けなく思う妻・小山が新製品の大量契約に成功し…。上司たちの不正とパワハラに我慢できず殴ったあげく辞職した石浜。小山は勇気を取り戻した夫を見直し、同僚たちは溜飲を下げる。高度成長下日本のサラリーマン・コメディ。

シネマヴェーラ渋谷ホームページより引用)

 

監督:原研吉

出演:石浜朗/小山明子/泉京子/日比野恵子/高野真二/トニー谷/三井弘次/大泉滉

 

 

いい男なんだが(義父も太鼓判!)、女性からはどうも冴えない、というか営業としてはかなりボンクラな石浜。

小山は旦那にハッパをかけたいもんだから、課長さんはいい男〜なんていいやがる。

隣に住む大泉とワンツーでやばい営業ぶり、このままじゃ。

小山は勝手に営業をして、旦那のかわりに成績を上げるが、上司からは旦那より逆に嫁に働いてもらいたいとスカウトしにくる始末。

いいとこなしの花婿人生、のはずが。

そんなとき、部長と課長が不正を行なっていることが発覚。ちょうどイベントにやってきた社長に申し立てするも、「なんで上司がいない時にいったんだ」と叱られる。

さて、石浜は男を見せることができるのか。

もちろん、見せます、そして夫婦仲も!

石浜朗の顔って、昭和なんだけど、いまでも通ずるイケメンである。

そうそう、嫁の実家がオモチャ問屋で、お父さんが凧揚げに夢中、なところがやけにかわいい。

『美しき抵抗』(1960・日活)

大学医学部助教授の松波亮輔は家庭の事には疎い男。金銭的にも無頓着で、妻ゆき子の苦労は並大抵のものではない。そんな一見平和な家庭に育った三人姉妹-長女で工場の栄養士・智恵子、タイピストの次女・都紀子、高校生の三女・久美子は、夫に従順すぎる母の態度に不満を抱く。

(Prime Videoより引用)

美しき抵抗

美しき抵抗

  • 沢本忠雄
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監督:森永健次郎

出演:沢本忠雄/吉永小百合/浜田光曠/香月美奈子

 

研究一筋のお父さん、いつか大学教授に、とお母さんはミシンの音を鳴らし続ける。製薬会社に誘われても、お父さんは家族に相談せず断り、そして三女の演劇合宿に行くのも反対。

長女のほうは、結婚話のある相手を、なにか気に入らない。そう、どこか父と同じものに感じるからだ。

封建的で、研究ばかり、家庭や妻を顧みない、そんな男。

次女だって、たまの出かけで酔って帰ってきたところをぶたれ、不満を爆発させてしまう。

父は反省し、大学を辞めて高給とりになろうとするのだが、喜ぶと思った妻は、「一度きりの人生なのだから」と研究を続けるべきだと話す。

それを布団のなかで聞いた姉妹は涙を流すのだった。

我慢をしているお母さんの矜持に胸を打つ。

そして吉永小百合のボーイフレンド浜田や、隣に住む沢本が、さわやかでとてもよい。

綺麗事だといわれても、誰かのことを大事に尊重できるのが、一番美しい、この世の中への「抵抗」なのだ。

 

 

『若い豹のむれ』(1959・日活)

日刊スポーツ連載小説、秋永芳郎原作映画化、マイト・ガイ、アキラの魅力を爆発させる青春アクション巨篇。

(Prime Videoより引用)

 

監督:松尾昭典

出演:小林旭/沢本忠雄/待田京介/青山恭二

 

小林旭は大学生、ボクサーチャンピオンを目指している。そして愛する人は、死んだ兄貴の嫁さんだった人(渡辺美佐子)。その人は旭がチャンピオンになるのを夢見ていた。

そんななか、大学の同級生の父親とその人が結婚することに。くさくさした夜の街を歩いていた時、同じボクシングジム通っていた沢本に唆され、ヤクザを紹介されあまつさえ酔った勢いで白木マリさんと……。

ヤクザに見込まれた旭は沢本の借金のため、裏の仕事を手伝うことに。

 

面白かった。ふとしたきっかけ、ちょっとした気の緩みで闇堕ち(?)していく旭。

しかし、渡辺美佐子さんの美しさ、稲垣美穂子さんのかわいらしさを凌駕する、白木マリさんのいい女っぷり!

撃たれて死んでしまう白木マリを、目に怪我をしながら抱き寄せる旭よ。

最後は渡辺美佐子が旭を追いかけてくるわけだが。

その砂浜のシーンも美しい。