きたはら邦画

午前0時の旧作日本映画案内

『復讐の牙』(1965・大映)

かつてスリ集団のボスだった田宮二郎は、弟によって自分が死んだことにされているのを知り…。自分の墓に花を添える謎の女、怪しいヨットハーバー、そして組織を陰で操る“土曜日の男”とは!? 田宮のスリ技の見事さと小山明子の美しさが際立つ、大映らしいシャレたミステリー。

シネマヴェーラ渋谷ホームページより引用)

 

監督:井上梅次

出演:田宮二郎/小山明子/滝瑛子/丸井太郎/東京子/村上不二夫/杉田康/大川修/安部徹/夏木章/小山内淳/守田学

 

どうやら警察が秘密裏に元スリの田宮を調べているらしい、そしてどうやら死亡届が出されているというのだ。

独自に調べてみると、浮かび上がってくるのは弟の存在、そして謎の女。どうやら弟はある裏組織に属しているらしい。

いやー面白かった。

三年前の出来事をなんでこの人(見てのお楽しみ)つらつら喋るんだ、と思ったら!

にしても田宮二郎、やっぱ他の俳優と顔の作りが違う。

男前だな〜と思いながら楽しく鑑賞。

田宮の舎弟たちもラストに大活躍! ってところもいい。

全ての人物が、きちんと役割を果たしていて。こういう作品を観ると、学びが多い。

実作者側の意見ですが。

(本筋とずれますが、これを観たのは東京で大雪の日。苦労してシネマヴェーラまで行ってよかった!)


 

『ホノルル・東京・香港 HONOLULU-TOKYO-HONGKONG』(1963・東宝、キャセイ・オーガニゼーション)

“香港三部作”の第三作。前二作がビター・スウィートなメロドラマだったのに対して、本作ではハワイや香港にロケをした、コメディ・タッチの華やかなドラマになった。場面ごとに衣装を変える尤敏のファッションや草笛光子のフラダンスがグッド。脚本は松山善三

 

監督:千葉泰樹

出演:宝田明/尤敏/加山雄三/星由里子/草笛光子/王引/林冲/上原謙/藤木悠/三木のり平/藤間紫/飯田蝶子

ハワイにやってきた宝田。ちょうど留学中の弟・加山がいた。ガールフレンドとして紹介されたのはミスコン女王にも選ばれた美女・尤敏。そして宝田の初恋の人、草笛光子も。

尤敏はミスコンの副賞で東京と香港旅行に行くことに。そして香港にいくのならと彼女の出生の秘密を父が告白する。実は家族とは血が繋がっておらず、しかも香港に許嫁がるというのだ。

東京に帰る宝田にアテンドされ、尤敏は東京に渡るのだが、二人は憎まれ口を叩きまくり。

(日本語を訊ねた時の「ごはん」→「飯だ」、「友達」→「恋人」なんて嘘、何も知らないことをいいことにたっぷりワサビの入った寿司を食わせたり、激辛で復讐されたりなどなど楽しい。ちなみに急にいなくなった尤敏を見つけた宝田がひっぱたくのだが、これがラストシーンで尤敏から反復されるところなど、楽しい)。

香港では、ついに出会った許嫁が実は……。

弟の加山も「大飯食らい」のいい男(でも頭は悪い)を好演。

人々の優しさととぼけた味わいが素晴らしい。

松山善三の脚本、やっぱ好きだな〜。

 

 

『彼女だけが知っている』(1960・松竹)

連続強姦事件の毒牙にかかった娘は…。ヒロインの苦悩と葛藤に事件の行方を絡めて描いたサスペンス。松竹ヌーヴェルヴァーグの牽引者の一人である高橋治監督のデビュー作で、中村八大によるMJQスタイルの音楽、傾いた構図、影を強調した画面構成など斬新な手法が冴える。

シネマヴェーラ渋谷ホームページより引用)

 

監督:高橋治

出演:小山明子/渡辺文雄/笠智衆/三井弘次/水戸光子

シネマヴェーラ渋谷で一月にやっていたのは小山明子さんの特集。

面白かった。

一時間とちょっとのなかでぎゅっと凝縮されている。

連続強姦殺人事件が起きている東京。捜査によって、小山の父・笠智衆、そして彼氏・渡辺は休むことはできなかった。

クリスマスイブの夜、小山が被害に。殺されることは免れたが、そのことを知られたくない。

娘が被害者になってしまった笠智衆は、娘と妻の気持ちを思いながらも刑事として、娘に証言させようとするが。

友人の家へ逃れる小山、あくまで娘のことを隠して捜査する笠智衆。事実を知った渡辺は。

小山が警察署に向かったとき、新たな事件が。

渡辺と別れようとする小山、犯人逮捕後に、辞職しようとする父。

すべてを終え、警察署から去っていく小山の背中を窓から眺めることしかできない渡辺は、走り出す。

深い傷と悲しみを超えた二人に幸あれ。

 


『二人の息子』(1961・東宝)

一流企業に勤めて妻子を養う兄と、タクシー運転手で気ままに生きる弟は、仲のよい兄弟だったが、父親の突然の失職を機に対立する。高度経済成長の陰で、押しつぶされそうになる家族の絆を凝視したビターなホームドラマの傑作。脚本は松山善三のオリジナル。

ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)

 

監督:千葉泰樹

出演:宝田明/加山雄三/白川由美/望月優子/藤原釜足/藤山陽子/原知佐子/浜美枝/小泉博/志村喬

 

宝田明は、家族の反対を押し切って白川由美と結婚。疎遠になっていた。

しかし、父が突然仕事を失い、金の問題が浮かび上がる。そうはいっても宝田のほうも娘がいる、やっとのことで文化的な生活ができるようになったばかりだ。弟の加山雄三は白タクの運転手となり家計を支えることとなるが、女の子を拾った晩、事故を起こしてしまう。

金がない。追い詰められる家族たち。金を渡したくない白川。宝田の決めたことは。

追い詰められる人々、そして貧しさの中で、兄弟は再び笑い合う。

 

加山雄三と女の子のやりとりが好きだ。たばこを2本引っこ抜いて、そのまま口にして火をつける女。一本を加山の口に咥えさせる。

うまくいったらよかったのに、その直後……。

『やっさもっさ』(1953・松竹大船)

終戦間もない横浜で混血児を預かる児童養護施設の切り盛りを任された野心家のヒロインを、若き淡島が体当たりで演じた。淡島のデビュー作『てんやわんや』の監督・原作コンビで、淡島の個性がさらに際立った辛口社会派コメディ。

神保町シアターホームページより引用)

 

監督:渋谷実

出演:淡島千景/小沢栄/佐田啓二/桂木洋子/倉田マユミ/東山千栄子

 

神保町シアターは1月末から「女優魂 忘れられない『この一本』」と銘打って、人気女優の白熱演技を集めている。今回は淡島千景さん。ちょうど『大番』四部作を観終えたばかりの観賞だったので、獅子文六! 淡島千景! 連続である。混血児たちの児童擁護施設を運営している淡島はかなりやりて、しかし美人。旦那の小沢は戦争が終わってからすっかりふ抜けてしまっている。そして裏ではパンパンの女性たちに、海外の兵隊のためにラブレターを代筆するというアルバイトをしていた。

あるとき、夫が出ていってしまう、なんと、児童養護施設周辺を一台娯楽施設にしようと企む会社に入社してしまったのだ。

ばらばらのピースは、ひとつにまとまることができるのか。

にしても野球したくない野球選手、佐田啓二や女性解放運動家(?)、子供を外国兵にお前の子だと嘘つくことに悩むパンパンなど、一癖も二癖もある人物たちが大騒ぎ。この大風呂敷と人物整理の手腕、さすが。

 

『大番 完結編』(1958・東宝)

シリーズ第四作。1949年、東京証券取引所が再開。故郷に戻っていた“ギューちゃん”は再び兜町へ。戦後の日本経済は朝鮮戦争の特需景気もあって好景気に沸く。“ギューちゃん”は一世一代の大勝負に出るが……。足かけ二年にわたる大ヒット・シリーズ堂々の完結篇。

ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)

 

監督:千葉泰樹

出演:加東大介/淡島千景/原節子/団令子/青山京子/仲代達矢/山村聰

 

そして時はすぎたのであった。

再びギューちゃんは兜町に戻り、仲代達矢の喫茶店の上で営業中。あるときチャップリンさんこと東野英治郎がやってきた。再び株は荒れる。機を逃すな!

そして史上最高の大儲け!

社長秘書のちゃっかり団令子に色目を使うも、手痛いしっぺ返し。社長なんだからとゴルフに精をだす。儲けたことで昔の女たちも現れ、淡島千景はキレ気味。しかし一番の問題は。

未亡人となった原節子のことを、いまだにギューちゃんは想っていることだった。

結婚してくれとプロポーズをするも、原節子さまは病に倒れ……。

すっかり元気を失ったギューちゃんだったが、再び、立ち上がる!

四部作を観ることができてよかった。

獅子文六の心意気。大傑作である。

『水戸黄門漫遊記』(1969・東宝)

幾度となく映画化されておなじみの水戸黄門の諸国行脚を森繁久彌はじめ喜劇人総出演で描く。撮影中、千葉は心臓発作を起こし、健康不安を抱えることになったため、本作が最後の映画作品となった。以後の千葉は東宝製作のテレビに活動の軸足を置くことになる。

ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)

 

監督:千葉泰樹

出演:森繁久彌/宝田明/高島忠夫/池内淳子/三木のり平/萩本欽一/坂上二郎/中村勘九郎/草笛光子/平田昭彦

 

画像もラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用。

さて、大映だと助さん→市川雷蔵、格さん→勝新太郎という眼福トリオでありましたが、こちらは助さんが宝田明、格さんは高島忠夫である。

森繁黄門さまは、「お前らの嫁さんも探してやるぞ」なんてぬかしていたが、結局この行脚、一番エロいのは黄門さま、である。

セクシー博打打ち、草笛光子には騙され、時折出会う美女、池内淳子には、若い二人よりもはっつく!

黄門さまが行脚中ということが早々にバレ、こっそり旅することができなくなったとき、容姿(というか髭)が似た男、三木のり平が、ニセ黄門さまにいつのまにかなってしまったり、どうにかして精力アップの薬をゲットしようと欲丸出しで突き進んだり!

世継ぎの騒動にも巻き込まれ、大騒ぎ。さまざまな問題をアッパーに解決!

最後にいい女池内は、実は黄門さまの旅を見守る隠密であると発覚し、最後は大慌てで逃げるのだが。

森繁主演の安定感で、あんまり頭を使わず観ることができる、お笑い水戸黄門

『沈丁花』(1966・東宝)

松山善三の原作をもとに、歯医者の家に生まれた四姉妹の結婚をめぐる騒動をオールスタア・キャストで描いた、多幸感溢れるホームドラマ。四姉妹が並んで歩く冒頭から心を鷲掴みにされる憎い作劇。センス抜群のセリフの掛け合い。高峰秀子監修の衣装も眼福なり。

ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)

 

監督:

出演:京マチ子/司葉子/団令子/星由里子/宝田明/仲代達矢/小林桂樹/夏木陽介

 

うわあ、大好きだこういう話。冒頭から最高なのだ。彼女たちがどんな人たちなのかが会話でわかる。そして目的は、父の墓参り!

三女の団、そして四女の星も夏木陽介と結婚。残されたのは一家の大黒柱の長女の京マチ子、そして次女の司葉子である。

母の杉村春子はどうしても結婚させたくて、叔父である加東大介に相談することに。やってきたのは宝田明。しかし宝田のほうは司をナンパ、その真意は、弟の佐藤充に紹介するためだった!

どうも噛み合わない男、仲代達矢は弟の通う大学の教授。

そして近所に歯科医が開業されるのだが。そこの院長小林桂樹は偵察しにやってきて、司に一目惚れ、である。

ハッピーエンドに向かってあっちへうろうろ、こっちへちょこまか。

もちろん、期待通りの大団円。

 

 

『続々 大番 怒涛篇』(1957・東宝)

シリーズ第三作。日中戦争の激化によって相場は低迷。借金まで背負った“ギューちゃん”は失意のあまり故郷に戻るが、統制品の値上がりを目にして闇商売で儲けると、今度は大阪で株取引を再開する。新たに山茶花究等のキャストを加え、ますます快調の大阪上陸篇。

ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)

 

監督:千葉泰樹

出演:加東大介/淡島千景/原節子/青山京子/仲代達矢/平田昭彦/太刀川洋一/三木のり平

このシリーズを毎週末に阿佐ヶ谷まで観に行ったときは、もうメンタルが最悪で(笑)、ぎゅーちゃんの頑張りに励まされるようだった。

さて、毎度お馴染み借金抱えて田舎に帰ったものの、田舎じゃ地元の名士である。そんなとき、船を使って大阪まで荷物を持ちコミ、ヤミの仕事をすることになったギューちゃん。手腕を発揮し儲けたものの、みかんを腐らせたり、元締めの山茶花究とやりあったりと大騒ぎ。

しかしそんななかやってきた淡島から、大親友の仲代達矢が戦地に赴くことになると聞き……。

電車での別れのシーン、めちゃくちゃ泣ける。なんでだだろうか。ぼくが男同士の友情に飢えているからか!?

戦争が始まる。

このとき、再び大勝負をかけるギューちゃん、しかし目論見はずれ……。

さてついに次回は完結編。戦争は、ギューちゃんたちはどうなるのか。

 

(お知らせ)

裏垢もやってます。こちらはどっちかっていうと日常のどーでもいいことをつらつらと。

urakitahara.hatenablog.com

『香港の星 STAR of HONG KONG』(1962・東宝、キャセイ・オーガニゼーション)

“香港三部作”の第二作。前作とストーリー上につながりはなく、独立したメロドラマ。商社マンの日本人男性と中国人医学生のすれ違いのラブロマンスを、香港・日本・シンガポール・マレーシアをまたいで描く。脚本家は前作の井手俊郎から笠原良三に交代。

ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)

 

監督:千葉泰樹

出演:宝田明/尤敏/団令子/草笛光子/王引/林冲/小泉博/藤木悠/田崎潤/加東大介/山村聰/久慈あさみ

 

写真は半券から。

敏腕リーマン宝田は、香港で日本で医学を学ぶ尤敏と出会う。尤敏の下宿先の団令子も、宝田をちょっと気になったり。北海道旅行でも運命の再会をし、宝田と尤敏にはなにやら運命のようなものがありそうで。

しかし団令子のことを想い、尤敏は宝田との連絡を断ちシンガポールにいってしまうのだが。

宝田は彼女を探し、そしてやはり二人は一緒にいなくてはならないと強く感じる、わけなんだけど今度は宝田が転勤に。

父の葬式とその出発日は重なった。やっと彼女は自分の気持ちに気づき、車を走らせるんだが。

メロドラマである。飛んでいく飛行機を眺める尤敏。

その姿に涙がほろり。

でも、追いかけちゃえよ、と思う。映画が終わったその先は、どうなるのか、わからない。

 

ところで、意地悪なクラブのママ、草笛光子が最高。性格悪いのに、どこか憎めない。いやたまったもんじゃないけど。