きたはら邦画

午前0時の旧作日本映画案内

『渡る世間は鬼ばかり ボロ家の春秋』(1958・松竹)

ひょんなことから多々良純の家に下宿することになったヴァイオリニストの佐田啓二。ところが多々良が姿を消し、彼から家を買ったと主張する者たちが次々乗り込んできて…。佐田の恋人・有馬稲子が下宿代をトイチで貸したりキスの代金を要求したりとドケチぶりを発揮。小山は高校の校長の元二号で家を買った一人。出演者が豪華すぎる梅崎春生原作の一本。

シネマヴェーラ渋谷ホームページより引用)

 

監督:中村登

出演:佐田啓二/有馬稲子/小山明子/日守新一/三井弘次/多々良純/三好栄子/瞳麗子/桂小金治

ノーと言えない男、佐田啓二

佐田啓二がまたいい男で、他の男たちと顔の作りが違うのだが、そこが「ダメなやつだな〜」と思わせる。

というのも、出てくる連中全員、生命力というか、ガツガツいきすぎ!

電車でスリを見つけ、捕まえてやったら、酒を飲もうと誘われてあれよあれよとたかられて(スリをされるのは善良な人ばかりではないのであった)、家がない? だったらうちに空き部屋があるから住めばいい、と誘われ、入居したら!

家の主だった男は妻と子供を残し失踪、しかも家の権利書をいろんな連中と取り交わしていた。

というわけで権利を主張する連中どもとの共同生活に。

金がないからヴァイオリン教室を開いたら、金をよこせとせびられる。

彼女は小銭を貯めてる教員に惚れ込む(というか金に)。

校長の二号は家を手に入れようと暗躍。

最後、家を狙い追い出そうとする中華料理屋の男たちとの大乱闘!

俺たちのボロ家は誰の手に、と思ったら火事!

それぞれが、いちおうなんとなく次を目指していくことができてハッピーエンド。

キスしたら金をよこせという恋人も、今回ばかりはタダ。

泣き笑いユーモアものの名作である。