きたはら邦画

午前0時の旧作日本映画案内

金子達仁『不器用なもんで。』

 

小林旭の本をまとめて読んでいるのだけど、数の多いこと! それだけ読者がいるってことだろう。僕も読みたいし。

さて、金子達仁さんといったらスポーツのノンフィクション作家、というイメージなのですが、我らがアキラにもインタビューをしております。

語られるスター時代の大人気エピソード、そしてスキャンダル、借金、ゴルフへの情熱、現代に対するアキラの目線など、コンパクトながら読みどころ多し。僕としては日活エピソードをもっと! おかわり! したいところですが、ま、他の本でいっぱいありますからね。

 

ところで、こんな部分がハッとした。

 

<どぶ板社会で生きている客に、どぶ板の映画を作っても誰も見ない>

小林旭が看板を背負っていた時代の日活での常套句だそうだ。そう、自分の日常を見るために、観客は払う金はない。しかし現代は「共感」が幅をきかせている。スターは庶民的になってしまった(着ている服だって、昔と違って買えてしまうのだ)。

 

もちろんぼくも共感ものは大好き。でも、どこか、全然違うもの、が見たい。金持ちの私生活、なんてことではなく、アクションだったりロマンティックだったり、非現実的な(まるで漫画、なんて言われちゃいそうだが)。

旧作邦画には、それがあるのだ。

現代の窮屈さから離れることができる。