きたはら邦画

午前0時の旧作日本映画案内

『九人の死刑囚』(日活・1957)

八百長から抜けようとして元締めを殺したオートレーサーの小林旭は死刑を宣告されるが…。新入りの小林を房から覗く死刑囚たちの目、目、目。死刑囚や看守たちの心情を描く作品ながら、嵐の中での脱獄や地下道などノワール的シーン多々あり。スターリン建築風刑務所、塔を斜めから撮るドイツ表現主義的ショットも素晴らしい。

 

監督:古川卓巳

出演:小林旭/浅丘ルリ子/左幸子/滝沢修/北林谷栄/左ト全/金子信雄/清水将夫/柳谷寛/小林重四郎/近藤宏/天本英世

 

こちらは小林旭×浅丘ルリ子、というよりは左幸子とのタッグ。ルリ子は小林旭が殺してしまった男の娘役。

死刑囚たちは、呼ばれるのを待つ。しかしこの「待つ」時間のあいだにさまざまなことを思い巡らす。脱走を試みようとする。慈善の点字が多くの子どもたちに喜びを与えていることを知ること、そして死を延ばすために知恵を巡らし本まで出す男。

彼らとのやりとり、そして小林旭はなぜ罪を犯したのか? 八百長レースを抜けるはずだった旭だが、左の働く店で金の計算が合わず、左が犯人扱いされたのを知り、金があったら文句はねえだろう、と元締めに金を借りようとバイクを走らせるのだが。

にしても、映像が素晴らしい。人間的ではない独房、そしてそんな場所で死に呼ばれるのを彼ら。

最後、死刑を免れる旭。しかし、罪は消えたわけではない。面会に向かう左が気づいて走るも、車が出て、門は閉められる。

やはりまだ、二人は遠い。