和田夏十さんは市川崑のパートナーであり脚本家。やっぱりぼくの世代では『黒い十人の女』(昔リバイバルブームがあった。まあドラマにもなったしね)である。
和田さんの脚本とエッセイをまとめた『和田夏十の本』というのもある(いまはKindleで読める)。
この本は、梶谷さんの随筆(と帯にあったので)、和田さんの言葉をキーワードにしながら、日々のことを綴っておられる。
なので、純粋な映画本、というわけでもないのだけれど、面白かった。
和田夏十さんの脚本は、市川崑のスタイリッシュな映像によく合う。切れ味が鋭く、ふとしたセリフの一つ一つがはっとさせられる。
梶谷さんは、和田さんの発言以外にも、このセリフのなかに「和田さん自身から出た言葉」を発見する。
とてもいい随筆だった。
随筆は、「そうだなあ」と頷いたり、「それはちょっと違うんでないの?」と軽い反発を覚えたり(もちろんそれは悪いことではない)しながら読む。この薄い本のなかにもたくさんあった。
さらりと読めるようで立ち止まってしまう。
生活のなかで、ふと立ち止まってしまうことを、書かれているからだと思う。