きたはら邦画

午前0時の旧作日本映画案内

『花と果実』(1967・日活)

一人の女子大学生の多感な乙女心が、大人の世界、大学のボーイフレンドとの接触によって、愛と哀しみと喜びにゆれ動く、みずみずしい青春像を描いた作品。

 

監督:森永健次郎

出演:和泉雅子/杉良太郎/山本陽子

 

大学生の成長もの、と書いたらそれまでなんだけれど、とにかくこの石坂洋次郎のあくまで明るい方へ向かっていく姿勢には励まされる。

和泉雅子の魅力、というのも大きいが、主人公の、ある意味能天気なのでは、と思えるほどの、人生への肯定、他者への思いやりによって物語は進む。

東京の大学に通う和泉は、同級生の「散文的」な男(まったく詩情のかけらもない)、杉良太郎といい感じ。そんななか、和泉の母の容態が危ない、となり淡路島へ。そして自分の出生の秘密を知る。

周りの人々も魅力的。男性恐怖症の親友、転勤の夫との協定で自由に恋愛する妻、などなど、それだけで一本できそうな人物たちが登場。和田浩治もプレイボーイ役で数分だけ登場する。

にしても、泉のお父さんの有島一郎が、浮気がやめられないお父さん(和泉としんみりしていたら、さっそく浮気である)がいい味を出している。

自分たちの秘密を打ち明けあい、そして海に入る和泉と杉。

そうなのだ。現代人って、心狭いのかも。度量が大事ってもんよ。でも、度量を示すにも、本当に素晴らしい相手でなくてはだめかもな。最近のこ、いい男を見極める力が弱まってるもん。