きたはら邦画

午前0時の旧作日本映画案内

『その人は遠く』(1963・日活)

母一人子一人の家族で試験勉強に明け暮れている岡田量介の元に、遠い親戚で国文科を卒業した才女の奈津子がやって来た。彼女の父親が急死し、同居することになったのだ。美しい従姉へ寄せる淡き初恋にも似た少年の憧れ通じ、青春の歓びと悩みを美しく描く純愛ロマン篇。

(Prime Videoより引用)

 

監督:堀池清

出演:芦川いづみ/和泉雅子/山内賢

 

浪人生の山内賢の家にやってきたのは京都でお嬢様育ちの芦川いづみ。両親を亡くし、身を寄せることになったわけです。というか、十代の若者からすりゃ、あんな美人のお姉さんがやってきたら(無邪気で優しくってさ)、そりゃ大変ですよ。

山内の大学合格が決まった頃、芦川は大阪へお嫁に行ってしまう。しばらくしてから会ってみると、すっかり大阪のガサツな人々(というか旦那とか、旦那の職場の教え子とか)になれた雰囲気。ぼんぼん育ちの山内からすりゃなにからなにまで気にくわない。

失望して帰ると、こんどは山内の母がタクシーに轢かれそうになって心臓麻痺で亡くなってしまう。その車に乗っていたのが和泉雅子である。

和泉雅子の方もたいへんな境遇で、連れ込み旅館を経営している母の身持ちの悪さを嫌悪している。次第に山内に惹かれていくのだが、山内のほうはデートしてもやたらと芦川いづみのことを話すもんだから、そりゃ腹も立ちます。

後半旦那の浮気で芦川が東京にやってきてからの……とか、和泉雅子の家出からの……とか、いまだったらラブコメ要素満々の展開になるのですが、さすがにそうは行きません。山内は誰を選ぶのか、よりも、芦川は、そして和泉はなにを選ぶのか、で物語は進んでいきます。

受け身というか、芦川への恋や、グイグイくる和泉に翻弄されっぱなし。

どこか、おじさんが回想する「うまくいかなかったほろ苦い恋」のようなテイストを感じるが、それもまた、趣きある一本です。