きたはら邦画

午前0時の旧作日本映画案内

『慈悲心鳥』(1954・新東宝)

親友同士(金持ちと優等生)が令嬢を好きになるが、彼女は義母の意向で金持ちと結婚。恋に破れた優等生は検事になり、元親友の疑獄事件を担当することになる。宇野重吉香川京子斎藤達雄、安部徹ら豪華メンバーが脇を固める菊池寛原作のメロドラマ。人形のような令嬢が、夫の危機に際し初めて自分の意志で生きようと奮起する姿が描かれる。

シネマヴェーラ渋谷より引用)

 

監督:松林宗惠

出演:角梨枝子/中山昭二/香川京子/和田孝/波多野憲/宇野重吉/斎藤達雄/安部徹/小川虎之助/髙田稔/邦千代子/久保菜穗子/小峰千代子/坪内美子/清川玉枝/小倉繁/鮎川浩/日吉としやす/生方賢一郎/武村新/久保春二/松本朝夫/髙松政雄/有馬新二/小森敏

 

二人の男が一人の女を愛する。女は川に身を投げた。

万葉集』の「菟原処女の伝説」である。この作品もまた、二人の男が女を愛していた。

一人は金持ちの家、一人は苦学生。女は苦学生のことを愛していたが、義母の「あなたのため」というカツアゲ(笑)で、金持ちの男と結婚することになる。苦学生の男がちょうどしk方試験に病気で落ちてしまったことも後押しした。

結婚式の日、電報が届く。

「キミノケッコンヲノロウ」

苦学生の男・河合は数年後、検事となる。

女・静子は夫・篠原と子供をもうけ、夫を愛し出していた。だが、篠原の会社の汚職の捜査の立ち合いで、河合は二人と再会することになったのだった。

菊池寛のメロドラマ! というくらいにいろんなことが起こる。夫は自殺してしまうし、静子は子供を連れて家を出てしまったり。

なにもかも人の言う通りにしていた女が、息子のため、生きるために自立の道に進むさまが美しい。

河合は電車で、一瞬静子ではないか、と子連れの女を見間違う。

そのときには、静子はもう次へと進んでいる。