きたはら邦画

午前0時の旧作日本映画案内

『花と波濤』(1954・新東宝)

京都で職業婦人になった筑紫あけみは対照的な2人から求婚される。そんな筑紫が好きになったモテモテ彫刻家は女性に頼って生きている。井上靖原作、助監督に瀬川昌治上原謙岡田英次久慈あさみと豪華な布陣の文芸メロドラマで、山形勲がチョイ役で出ている。現代的な女性の結婚話を通して、人間が自立する意味を問う一作。

シネマヴェーラ渋谷より引用)

監督:松林宗惠

出演:上原謙/久慈あさみ/岡田英次/筑紫あけみ/高杉早苗/山内明/夏川靜江/野上千鶴子/千明みゆき/長岡輝子/高田稔/淸水將夫/三原純/十朱久雄/山形勲/鮎川浩/有馬新二/児玉一郎/天地茂

現在の京都といったらもうえらいことになっていて、観光地なんて静かにゆっくりと〜なんてノリじゃなくなっている。

なのでこんなふうにかつての京都をみると、いいもんだね〜と思うわけです。非常事態宣言のときの京都の寺ってこんなだったんかな(何度か訪ねたことはあるけど、たしかに人は少なくて、申し訳ないけど、よかったです)。詩仙道に清水寺三千院に鴨川沿いである。鴨川沿いなんて等間隔でカップルならんでないし(笑)。

京都に職業夫人となるべくやってきた主人公のお嬢さん、郷里になんとなくいい感じの男(だが弱気! そして日本でもっとも危なっかしいと思われる小説家志望!)もおり、仕事を紹介してくれた考古学の研究者(こっちはなんか偉そう、という)からも求婚され、そのうえ陶芸家(やっぱアートよりの人ってのはおいそれと関わっちゃいかんねえ)も気に掛かる。

彼女は誰を選ぶのか!?

弱気な彼は自滅(としかいいようがない)、強気な方はなんかいけすかない(というか弱気な方の自殺未遂をこすってくるる)。

では陶芸家のほうは?

こちらもこちらでスポンサーの女は元カノ、そして別れ話がこじれてる女優の女もありととにかくめんどくさい。

後半元カノがスポンサーを降り、女優はといえば、まさかの弱気くんを愛してしまう。

お嬢さんと陶芸家がうまくいくのかな、と思いきや、そういうもんでもないのである。

なんだか現代的な終わり方だ。誰ともくっつくことはない。でも、最後の彼女の顔は晴れやかである。