きたはら邦画

午前0時の旧作日本映画案内

『驟雨』(1956・東宝)

結婚から4年、子供のいない夫婦に倦怠期が訪れている。何の予定もない日曜日、ケンカをしているわけではないが、二人の会話に思いやりの言葉はなく、互いの行動にケチを付け合うばかり。ある日、新婚旅行から戻ったばかりの文子の姪・あや子が訪ねてくる。夫の不満を漏らすあや子に同情する文子と、夫の立場に立って反論する亮太郎。それがいつしか文子と亮太郎の口論に発展していき…。夫婦の悲喜こもごもを明るいタッチで描き出す。

(Prime Videoより引用)

 

監督:成瀬巳喜男
出演:原節子/佐野周二/香川京子/小林桂樹/根岸明美/加東大介/伊豆肇

 

 

作品の成り立ちに関してはラピュタ阿佐ヶ谷の「ニュープリント大作戦」の紹介ページを。

岸田國士の夫婦や家庭を扱った一幕もの戯曲数篇を水木洋子がまとめて脚色、成瀬巳喜男が監督した小市民映画の名篇。結婚四年、倦怠期にさしかかった夫婦の悲喜こもごもを細やかな描写で綴る。普通の主婦をさらりと演じる原節子も◎。

ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)

岸田國士である。岸田國士戯曲賞なんて名前を冠するほどの人である。ちなみに僕も、養成所で「紙風船」って戯曲をやりました。

冒頭はまさにそれ。若い夫婦、しかもどこか倦怠期、というかお金もないし夫婦関係もどこかうまくいっていない。妹の香川京子がきたことで、ちょっとした感情の揺れがあったり(香川の旦那の悪口に便乗する原節子!)、餌をやってる野良犬で近所からのクレームがあったり、そしてやはり、お金の問題が。会社を辞める辞めないの騒ぎなど、平凡で変わり映えのない日常なんて実はない、でもなんとなく、「平凡」で「変わり映え」ないものに集約されていってしまう。

つまんない。

でも、二人でいる。

明日も金の心配をしながら、二人で飯を食う。

ラストの紙風船の白熱する打ち合い! は必見。語らずに、語ることばかりなのだ。あとは感じ取れるかどうかだ、関係って。