きたはら邦画

午前0時の旧作日本映画案内

『乳房』(1993・西友=東映=東北新社)

飲む打つ買うの三拍子が揃った不良中年と、白血病を患った恋女房との、美しくも哀しい恋愛譚。伊集院静の自伝的短編の映画化で、渋い演技で人気の名脇役小林薫が色気全開で主演した。

神保町シアター

 

監督:根岸吉太郎

出演:小林薫/及川麻衣/竹中直人/戸川純/金久美子/滝沢涼子

 

清潔な映画だった。

ちゃらんぽらんな生活をしていた小林薫を一途に愛する若い妻。しかし彼女は病に。

さまざまな妻との思い出が挟まれながら、妻が治るという希望を捨てることのできない小林。

短く、最後観ているものに委ねられる。いい短編を、誠実に映画化した。

小林薫の弟分? な竹中直人、そしてなんでも小林に頼ってしまう竹中に不満な妻・戸川純が素晴らしい。

ちょっとばかり男をいいふうに描きすぎな気もしなくもないが、やはりでも、男はかっこつける生き物だなあ、としみじみ。