きたはら邦画

午前0時の旧作日本映画案内

『長屋紳士録』(1947・松竹大船)

小津の戦後第一作で、余儀なく戦災孤児を預かった女と、同じ長屋の住人達が紡ぐ人情噺。劇中の「のぞきからくりの唄」は、実際の酒宴で笠が披露した小津のお気に入り。

神保町シアターホームページより引用)

 

監督:小津安二郎

出演:飯田蝶子/青木放屁/吉川満子/河村黎吉/坂本武/笠智衆

 

神保町シアターの新年は「白と黒の小津安二郎」というわけで、フィルム上映である。

ある程度ネットで観ることができるわけだが、やっぱり小津安二郎は極力劇場で観たほうがいい。環境に邪魔されず、細かいところを楽しみたいのである。ま、どの映画もそうですが。

で、比較的短い(約70分)の作品なので、気軽な感じで観に行った、のですが!

めちゃめちゃ細かい! 映画館だと観ている人々の笑いが起こるたび、「やっぱ小津安二郎って、お勉強で見がちだけど、ただただ楽しいよな〜」と思う。

笠智衆が拾ってきた少年を嫌々ながら面倒見ることになった飯田。我が子として育てよう、となったとき、父が現れて、少年は父と共に去っていく。

上質な短編小説を思わせる。

最後の飯田の涙と、「(子供を探すなら)上野あたり」などとてきと〜なことを言う笠智衆(若い! かっこいい!)からの、身寄りのない少年たちの映像。西郷さんの銅像の背中。

 

長屋の人々のおかしみ溢れる会話がとにかく楽しい。にしてもこの少年、無表情のくせに、なんだかどんどんかわいくなってくるの不思議だ。感情移入したってことです。