昭和二十年。母と別れて一人疎開先に向かう少年と、列車内で知りあった奇妙な中年男との交流を描いた心あたたまる物語。獅子文六の評判小説の映画化で、やさしい「馬おじさん」には原作のイメージにぴったり伊藤雄之助。
(ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)
監督:野崎正郎
出演:真藤孝行/伊藤雄之助/井川邦子/山内明/九条映子/松本克平/磯野秋雄
昭和20年、少年は母と別れて広島へ列車で向かうことに。向かい合わせたのは不機嫌な面持ちの馬みたいに顔が長いおじさん。
途中で空襲があり、列車から避難したとき、少年は広島の疎開先の住所が書かれた手紙をなくしてしまう。
「馬おじさん」の故郷へ一緒に行き、落ち着いてからハガキで母親に連絡することになるのだが、田舎のガキンチョも馬おじさんの兄夫婦も少年のことをいじめるのであった。
それでもめげずに暮らしていると、母へ送った手紙が返送される。戦争が終わり東京に戻るまで、どうにもならない。
八月、戦争が終わった。そして馬おじさんは少年にポーズを取らせる。それは列車から逃れて、へたりこみ空を見上げた姿だった。
地上はこんなにせまいのに、天は広い。そう思ったら戦争なんてしない。そうあのとき、そしてくじけそうなとき、馬おじさんは言ったのだ。
馬おじさんは急に気を切り、掘り出した。おじさんは彫刻家だったのだ。完成した作品を東京の展覧会に発表する。そして母親を見つけてやる、と言って馬おじさんは去っていった。おじさんがいなくなったら余計に家の人たちは辛く当たる。そして連絡はこない。少年も真似事のようにウサギをモデルに彫刻を始める。
あるとき、大阪まで船に乗っけていってやる、という男を信じて少年は家を飛び出す。だが、その船は闇の品物を運ぶものだった。少年は保護されるが、とにかく東京に行かなくては、は警察から逃げだした。
東京では馬おじさんの作品が評判になっていた。母がその彫刻の写真を見て、これは息子だ、といい、戦地から帰ってきた父と共に馬おじさんを訪ねることに。
三人で少年が保護された警察署に行くと、逃げしたあとだった。きっとあの子は東京の美術館に行くはずだ。
少年は美術館で馬おじさんの居所を訊ねるが、知らない、とすげなくされ、夜、美術館の前で佇んでいた。
馬おじさんが駆けつけてくる。そして、本当に会いたかったお母さんとお父さんがやってくる。
こういう話に弱い。母子ものであり、知らないおじさんと少年の交流、そして厳しい世の中でも決して健全さを忘れないことが描かれているような。
伊藤雄之助のウマ面も最高だが、少年がとにかく演技派!
獅子文六は、信頼できる。