きたはら邦画

午前0時の旧作日本映画案内

『若草物語』(1964・日活)

 若い後妻を持った父親の勇造を気遣って、高村家の由紀、しずか、チエコの三人姉妹は、東京へ嫁いだ長姉・早苗のところへ家出を決行した。年頃娘三人に突然飛び込まれた早苗と夫・宏一の生活はかきまわされ、しぶしぶ貯金の一部を出してアパートを借りてやるのだった。(Prime videoより引用)

 

監督:森永健次郎

出演:芦川いづみ/浅丘ルリ子/吉永小百合/和泉雅子

若草物語』日本版? いや、四人姉妹の物語だから、そう言われたらそうかも。違うっちゃ違う。

 動画配信にあるあらすじは、冒頭のシチュエーションだけを伝えているときが多い。今回の作品も、たしかにその通りなのだが、これでは観ようとまでならないだろう(笑)。

 東京へやってきた三人(次女の浅丘、三女の吉永、四女の和泉)のそれぞれの恋模様が描かれる。幼馴染の浜田光夫と再会し、浅丘と吉永は恋のライバルになってしまう。浜田は昔から浅丘が好きであったことから、二人は付き合うことになり、吉永は失恋してしまう。吉永は浜田の同僚、杉山俊夫となんとなくの交際をすることになる。

 和泉のほうは天真爛漫で職場で知り合った山内賢といい感じに。

 さて、日活映画は定番のカップリングがある。

 吉永小百合浜田光夫和泉雅子山内賢浅丘ルリ子は今回出ていないが、石原裕次郎小林旭とのカップリングをよく観る。

 なので、浅丘と浜田か〜などと観ていると、やっぱりそこは、齟齬が生まれるのであった。

 浜田は仕事が忙しく、なかなか浅丘とデートをすることができない。そんななかで登場するのが、和田浩治だ。

 和田浩治は贔屓なのでちょっと書かせていただくと、日活映画ではダイヤモンドラインなる、目玉の俳優がいる。石原裕次郎、赤城圭一郎、小林旭和田浩治の四人が初期メン。その後宍戸錠二谷英明も含まれることになる。和田は石原裕次郎に似ているということで荒唐無稽な裕次郎ジュニア版、みたいな作品によく主演している。他の面々と比べ、いまいちカラーを出すことができず、次第に脇に回っていくことになる。

 実は和田の芝居はとてもいい。若い頃のデビューということもあるのか、ちょうど二十代前半のころには、なんとも繊細な芝居をする。日活なのに! いや、男らしい役柄なんだけれど、相手へのセリフの置き方がいいのだ。

 今作では金持ち大学生役で、ことあるごとに浅丘を遊びに誘う。

 愛しているけどなかなか会えない浜田。愛してくれている和田。どちらを選ぶのか?

 そして吉永は本当に好きな浜田への想いを断ち切れるのか?

 が話の中心になる。

 その隙間に、和泉・山内ペアのかわいい恋が入り、くすりとさせられる。実家に帰ることになった山内に、キスを許すのだが、初めてなものだから……。そのやりとりと、ちょっとした落ちはぜひ観て楽しんでもらいたい。

 なんで足があるんだろう、それは、好きな人のもとに走るためにある。そんなふうに思う。さっぱりとした鑑賞後の気分が味わえる。日活の青春ものにはずれはない。

カクヨムより転載)