邦画と銭湯

映画を観て風呂に入った記録、ほかにも寺社仏閣巡りとか諸々。

『人情紙風船』(1937・東宝)

江戸深川の棟割長屋。浪人海野又十郎は今日も頼みの毛利三左衛門に仕官の途を求めるが、いい返事をもらえない。一方、壁隣に住む髪結新三は商売道具を質に入れようと白子屋を訪れるが、こけにされたことから、白子屋の娘お駒を誘拐してしまう…。

シナリオライターを経て、昭和7年に監督デビューした山中貞雄のP.C.L 入社第一回作品。1 カットの為に約36mの長さの石垣を作り、ステージをブッ通す棟割長屋のセットを組むなど、リアルな映像にこだわった。山中貞雄は、わずか5年半の間に26本の時代劇映画を作り、そのすべてが評判を呼んだが、本作の完成直後に日中戦争に召集され、中国にて戦病死。本作が遺作となった。

早稲田松竹ホームページより引用)

 

監督:山中貞雄

出演:河原崎長十郎/中村翫右衛門/山岸しづ江/中村鶴蔵/霧立のぼる/橘小三郎

じつは、あんま無理して見ないでもいいかもな〜同時上映だった成瀬巳喜男を観たら帰ろうかな〜くらいのテンションだったんだけど、最高でした。

ほんとうにびっくりするくらいに。

長屋の群像もの(冒頭が自殺者がでて大騒ぎ! これがラストに効いてくる)。なんとなくみんな情けないながらもなんとか生きている。仕官を求めながらも相手にされなかったり、威勢はいいけどやっぱ弱かったり、でも酒が好き、みんなで騒ぐのが好き。

プライドを傷つけられたことで誘拐騒ぎが起こり、そしてみんな胸のすく思いもしたものだが、それがさまざまな因果となっていく。

最後の風でころころ転がる紙風船よ。

儚い、って言葉で言い表してしまったら悲しくなるほど、生々しい。