きたはら邦画

午前0時の旧作日本映画案内

『星は何でも知っている』(1958・日活)

天才作家として持ち上げられていた嵯峨栞は、マネージャーの目をごまかし夜の盛り場へ飛び出す。金を持たずに飛び出してしまった栞を救ってくれた五郎と楽しく遊ぶ姿は天才作家の面影がない。その時、ジャズ喫茶のステージで歌っているのが幼馴染の平戸昌彦であることに気付き驚く。(Prime Videoより引用)

 

監督:吉村廉

出演:岡田真澄/丘野美子/平尾昌章/菅井一郎/葵真木子/伊藤寿章/初井言栄

「日本のサガン」とまで言われる天才高校生作家はマネージャーのプロデュースでがんじがらめの生活。

と、いうわけでもちろん窮屈な生活から彼女は抜け出すわけだが、無一文なもんだからタクシーの支払いもできず揉めたところを、週刊誌記者の岡田真澄が助け、一緒に夜遊びすることに。そこでロカビリーの歌い手になった幼馴染に遭遇し、昔の話に花を咲かす、のだが、そこを別の記者に見つかりそうになり、帰ってしまう。

岡田真澄はまさかあの女の子がと、こうなったらスクープ記事を作ってやろうと幼馴染を利用して二人の思い出の江ノ島に誘き寄せることに。

ローマの休日』風展開になってもいいっていうのに、いきなり方向転換!

岡田は仕事で、幼馴染役の平尾は「なんだかかわいそうになっちゃった」んで、丘野美子を外に出してやろうとする。

全編通してドタバタ風のタッチで、短い作品であるところを見ると、同時上映の「添え物映画」ってやつである。当時人気の平尾昌章(タイトル・歌も平尾)をフューチャーしたって感じ。

さて、マネージャーのイメージ戦略の女流作家風振る舞いを覆すような、「水着で海を楽しむ写真」を撮影しようとするカメラマン、そして止めようとするマネージャー江ノ島で大騒ぎ。

夜、昼間の楽しかったことをしみじみと語る丘野。岡田のタバコに火をつけ、

「一度こんなことをしてみたかったの」

「どんな気持ちだい」

「不思議だわ」

丘野が席を外したとき、岡田はカメラマンに昼間撮った作品を没にしたいと申し出る。

あ、やっぱりこれは『ローマの休日』だ!

岡田の正体を知る丘野。

騙されたことを憤る丘野に、「僕を信じてくれ」と言う岡田。すっかりめろめろってやつである。

結局丘野は、岡田のことを想いながらも去り、文学賞を受賞する。その直後、海辺で盗撮していた別の男が、そして岡田が止めた水着写真とは別の写真が流出されてしまうことに。

不信感を拭いきれない彼女と、自分ではないと弁解する岡田。

海外へ行ってしまう彼女に、真実は伝わるのか?

48分なので、ちょっとした時間で楽しむことができる、かわいらしい物語だ。

にしても岡田真澄、そのバタ臭さ。いい男感、すごいな。川島雄三作品に出た時のとぼけた感じや、太陽族映画に出たときのクールさもいいけれど、なんだか男前であることを活かした恋愛映画って、にやにやしてしまう。

カクヨムより転載)