きたはら邦画

午前0時の旧作日本映画案内

『古都』(1963・松竹)

京呉服問屋の一人娘として何不自由なく育てられた千重子は、中学生の時、両親から「私たちはお前の本当の親ではない」と知らされる。だが、育ての親との仲は変わらずに睦まじかった。千重子は清滝川の上流にある村が好きでよく訪れたが、ある日、そこで北山杉を磨いている自分とそっくりの苗子を見つけた。祗園祭の宵宮で再会した二人は双子の姉妹だと知る。西陣の織元の息子から求婚された苗子はことわってしまう。それは・・・。

(Prime Videoより引用)

 

監督:中村登

出演:岩下志麻/吉田輝雄/早川保

岩下志麻の美しさもさることながら、ああ、なんと懐かしい(といっても当時生まれてないんですが)京都の景色よ。

こんなに空いてる清水寺なんてコロナ禍のとき一度見たくらいだ。祇園祭時代祭平安神宮に嵯峨に北山。観ているだけで癒される……はずなのに! 川端康成の恐ろしさよ。

生き別れの妹は、姉のことを愛している織元の息子(長門裕之がいいんだこれが!)に結婚を申しこまれる。けっして姉の迷惑をかけてはいけないと陰に生きる妹だが、そのときの姉への複雑な感情……!

川端康成のあのトーン。美しさもある、愛だってある。しかし欲望と、悪、とか魔としかいいえないなにかが足元に忍び寄ってくる、ような……が見事だ。美しければ美しいほどに、哀しい。

 

この、歩きたかった京都を観るために、また観るだろうと思う。幻想となってしまったかもしれない、京都の街だ。