きたはら邦画

午前0時の旧作日本映画案内

『たそがれの東京タワー』(1959・大映)

夢見る可憐な乙女がたそがれの東京タワーで初めて知った恋―思いがけぬ障害に再びめぐりあえる日を美しい感傷をもって描く甘美哀愁篇

(Prime Videoより引用)

 

監督:阿部毅

出演:仁木多鶴子/小林勝彦/見明凡太朗

 

施設育ちの貧しいお針子の女の子は、せっかくの休みの前日にも出かける予定も着飾る服もない。

思わずもう一人の自分と対話(笑)する。妄想たくましいのである。職場から持って帰って直していたコートを羽織って、東京の街へ。上等なコートを着た自分は、まるで別人のような心持ちに。

東京タワーの展望台で知り合ったなかなか素敵な男子。明日も会う約束をしてしまい、再びコートを着てしまう。

彼は自動車技師らしい。ドライブデートののち、「また会いたい」と誘われる。再び東京タワーで、「タワーの階段は何段か」なんて実際に降りてみることに。

くたびれてしまった彼女をおぶってやるよ、と彼がいう。嫌がりながらもおぶってもらいちょっとだけキスをする二人。そのままおぶってもらう、というよりかつがれながら、彼女は家族について、嘘をついてしまう。それは夢のような「だったらよかった」ことだ。

父に会ってくれないか、と彼に言われ、彼女は逃げ出す。

もう会ってはいけない、と思いながらも会わずにいられない。もう着ていく服はない。ショーウインドーにあった一着を着て、彼女は再び東京タワーへ。

そのとき店のブローチを無くしてしまう。同じものを買ってあげよう、と出した彼の財布には大金が。

意を決して翌週、ありのままの姿で東京タワーに行くも、彼の方はスピード違反で止められ、会うことができなかった。

お使い途中、彼女は彼を見かける。そして、彼が社長の息子だということが判明する。身分違いに絶望するも、いつものようにもう一人の自分は現れてくれない。

彼のほうも彼女の素性がわかり、向かってみるも彼女はいなかった。

彼女は東京タワーにいた。一目だけでも会って別れようと思い、彼の会社へ向かう。そこには彼との結婚を狙っている幼馴染がいた…。

 

「わたしたち、ついに御伽噺を信じちゃったわね」

幼馴染も、そして父も、二人の恋を最後許し、閉塔寸前に東京タワーで二人は。

 

「御伽噺みたい」な話だが、それでいいのだ。これはちょっとした御伽噺で、だからこそ人物たちは全員最後には優しくなる。

恋人たちのための祝福の映画は、観ていて楽しい。