きたはら邦画

午前0時の旧作日本映画案内

『人間に賭けるな』(1964・日活)

愛人の競輪選手に賭け続けるやくざの女房。ギラギラと燃える女の執念に、それまで無気力な生活を送っていた中年サラリーマンもひきずられていく──。松竹ヌーヴェルヴァーグの森川英太郎、田村孟が脚本を手掛けた異色の風俗ドラマ。

ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)

 

監督:前田満州
出演:渡辺美佐子/川地民夫/藤村有弘/結城美栄子/二本柳寛

 

 

人間に賭ける? 信じられない。

冒頭の対話にあるように、競輪=人間に賭けるなんて、よくできるな、とある。もちろんこれは、人間に賭ける物語である。

ヤクザの女房、渡辺は、競輪選手の川地を愛し、そしてヤクザたちの八百長の犠牲にさせず走らせようとする。なぜなら川地は。ほんとうは勝てる男だから。

渡辺の妹、結城は川地に競輪をやめてくれという。そしてつつましく暮らそうと身体を与える。

渡辺は金を使い込み、川地に賭け続けるが、川地は勝とうとしない。

川地に賭けろという渡辺の言葉を信じ、窮地から逃れることができた藤村は、渡辺を追い続けることになる。

とにかく映像が素晴らしい。藤村の住むアパートの窓から見える住人たち、そして藤村の部屋、とか。さびれたホテルのシーンとか。美術の一つ一つにこだわりがある。そして競輪場での熱狂。

川地は渡辺と結城どっちを選ぶのか。どっちも選ばない。「仕事」としてヤクザの資金作りの八百長に加担し続ける。

残された女たち、そして渡辺の狂乱を眺める藤村。なにもかも寂しく、真っ昼間の明るさに照らされているはずなのに悲しい。