きたはら邦画

午前0時の旧作日本映画案内

『伊豆の踊子』(1967・東宝)

伊豆へ一人旅にでた青年が、旅芸人の一行と道連れになり、純粋無垢な踊子の少女に心惹かれていく──。恩地日出夫監督、内藤洋子の組みあわせで、何度もリメイクされた川端文学に挑む。最高に可憐なヒロイン薫の誕生。

ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)

 

監督:恩地日出夫
出演:内藤洋子/黒沢年男/団令子/酒井和歌子/田村奈巳/江原達怡/乙羽信子

 

 

もう誰がなんと言おうが名作、川端康成のアレが原作である。ウブな書生さんが出会った旅芸人一座。その末娘の踊子との淡い恋、である。

しかしそこかしこに死の匂い、実際の死・そして語られる過去の死がある。つまり、作中の人々は生き残った人である。生き残った人々は、諦めたり憤ったりしながらも、それぞれの運命を生きる。

にしても娼婦の団令子、そして最後娘の恋を諦めさせる乙羽信子の素晴らしさよ。

最後、書生は涙をだらだらと流すが、踊子は泣かない。泣いてなるものか、と。

なにやら観終わって、やっと『伊豆の踊子』の本質、のようなものを理解した気がする。

あの頃夜は暗く、青空はいまよりも清らかで、だが男はいつまでもしみったれていて、女はいつだって、毅然としている。それが現実であるのか、川端にとってなのか。

内藤洋子の最後の表情を、どう解釈するかで、観た人がどんな人なのか、わかる気がします(笑)。

 

あ、一座の兄貴、江原達怡がすごくよかったですね。元新派の役者で書生を気に入っているんだけど、一瞬ぴりっとするところ。