きたはら邦画

午前0時の旧作日本映画案内

『秀子の車掌さん』(1941・南旺映画)

ある山間の田舎町を舞台に、バスの運転手と女車掌が伸び悩む客足をなんとかしようと奮闘する──。井伏鱒二の短篇『おこまさん』の映画化。数々の名作を生みだした成瀬巳喜男監督と高峰秀子はこの作品で初めて顔をあわせた。

ラピュタ阿佐ヶ谷ホームぺージより引用)

 

監督:成瀬巳喜男
出演:高峰秀子/藤原鶏太/夏川大二郎/清川玉枝/勝見庸太郎/榊田敬治/山川ひろし

 

春のラピュタ阿佐ヶ谷のモーニングは、高峰秀子さん特集。しかしやはり半端ない数ありますので、今回は「少女スタア時代篇」である。

www.laputa-jp.com

 

にしても、バスの車掌(昔はお客さんのお金のやりとりとかアナウンスをしている女性が運転手の他にいるんですね)の高峰秀子、かわいすぎ! そりゃみんな好きになるべや〜。笑ってくれるだけでキュンです。

田舎のオンボロバスは、ライバル会社のバスに負け気味。盛り返そうと運転中にバスガイド的なことをしてみたら、となり、文章作りにちょうど逗留中の作家先生(なんかかわいい。温泉でばしゃばしゃやってたり、とぼけてる!)にたのむことに。うまくできたと思ったその矢先、バスが事故を起こしてしまう。

どうなるんだ!? 社長はいい加減でなんならいつでもバス事業やめそうだぞ!? 

田園風景とのんびりした人々、そして高峰秀子

ほのぼのとした楽しい一本。都会に疲れた人は、ぜひ。

DVDあります。

 

『ピンクのカーテン』(1982・日活)

“兄ちゃんだって男だよ”美しく熟した妹の<体臭>それは≪夢姦≫への誘い。アパートに同居することになった兄と妹の危うい関係を軽快かつ哀感のある語り口で描いたジョージ秋山原作コミック原作の日活ロマンポルノ。性的に大胆ながらも、兄に無邪気に甘える妹・野理子に美保純。彼女の圧倒的な存在感は、ともすれば暗くなりがちなプロットのこの作品に、爽やかな風を送り込んでいる。

(Prime Videoより引用)

 

監督:上垣保朗

出演:美保純/萩尾なおみ/阿部雅彦

 

なにせジョージ秋山。そして美保純!

いや、いつか観ようと思いつつ、先延ばしにしていました。で、観た。

めちゃいい。

美保純さんのプロポーションの素晴らしさもだが、青春ものとしてめちゃ身に染みた。

お兄ちゃんの阿部の部屋に、美保純が帰ってくる。結婚するはずだったのを取りやめて。実は美保純は美容院の経営者のちょび髭男とのセックスが忘れられないのだ。

うーむ、中年男の毒牙にかかっているよくあるやつだ。

兄妹ふたりっきりでがんばってきただけあって、お兄ちゃんは美保純が心配だ。いや、エッチすぎて美保純で自慰するほどに(うん、やばいですね)。

お兄ちゃんの方は女性経験は少ない(というか作中で童貞卒業する)。そして美保純のほうは中年との恋愛が終わり(その理由が無邪気に美保純が男の陰毛に白髪を見つけたことで笑)、悲しみのなかで美保純はお兄ちゃんに……。

お兄ちゃんのほうのなしくずしな恋愛(かつて兄に犯された女性と)の結末……。

明るい美保純の魅力で全体は明るいように見えて、青春時代の焦燥感が描かれている。名作だ。まあなんか全体のトーン、近親相姦に対してけっこう敷居が低いのがなんかな〜ってとこであるが。

こりゃ続編を観なくては!

お兄ちゃんの阿部雅彦はどうなるのか、が気になる。

ところで主題歌が原マスミさん! 素敵だ。

『喜劇 右むけェ左!』(1970・渡辺プロダクション)

渡辺プロの社長に喜劇センスを見込まれて東宝に。女性下着会社のダメ社員たちが自衛隊体験入隊。猛訓練を受けるが、全然更生しないのが嬉しい。会社では死んでる部長が入隊した途端、がぜん張り切るのがケッサク。犬塚弘快演!結末はギョギョッ。

ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)

 

監督:前田陽一

出演:堺正章/なべおさみ/井上順之/ザ・タイガース/吉沢京子/犬塚弘

下着ショーで失敗した連中が集った、海外向けに親切された部署、それ罰ゲームでは? 謎に自衛隊の研修に行くことに。一番やる気なかった課長が、かつて戦争時代、駐屯地にいた、といいだし覚醒!?

どうやらあのとき、課長は殺されかけたらしい。というのも、本土決戦に備えた金のことを知ってしまったから。そんな事実を知り、そして部下たちは「その金、ここにあるはず」と一攫千金ゲットのために奮闘。

野球の試合に見せかけて!

パラシュート部隊に志願して!

見学したいと見せかけて!

やっとこさ手に入れた金は、一円札の束。現在の物価では、億どころか十万ぽっちだった。

 

自衛隊のパーティーではタイガーズはライブするし、自衛隊員の井上順がラストまさかの。む。以前もこの監督でこのオチがあったような(笑)。

 

課長を崇拝する部下のなべおさみ、かわいいな、しかもうまい。

 

にしてもなんでこんなダメ社員が海外向け部署になったかというと。

……下着を履かない部族に売りつけるため、だと(笑)。

 

『四畳半襖の裏張り』(1973・日活)

大正時代の半ばの花街。世の中は米騒動で揺れ、号外が出回っている日々であるが、遊び人の信介はお構いなしに芸者をあげての遊興を楽しむ。柚子は恥ずかしがりながらも薄暗闇の中で、巧みな信介の愛撫に身をゆだね…。

(U-NEXTより引用)

 

監督:神代辰巳

出演:宮下順子/江角英明/山谷初男

面白かった。いや、世の中激動、だが男と女は(あるいは男は女を、女は男を)しょうもない。

いや、無学なもんで原作未読なんですが、なにがあろうとなくならないのは性欲! 愛?

顔のいい男は気をつけろ、はじめての相手に気をやるな、などなど金言満載。

 

『夕やけ雲』(1956・松竹大船)

東京・下町で小さな魚屋を営む一家の長男は、ある夢を抱いていたが――。木下の実妹・楠田の脚本で描かれる苦々しくも美しい青春譚。

神保町シアターホームページより引用)

 

監督:木下恵介

出演:久我美子/田村高廣/望月優子/田中晋二/有田紀子/山田五十鈴

主人公のモノローグ。そして始まるのは彼の幼かった頃の思い出。
魚屋になりたくない気持ち、妹が養子に出される、仲良しの友達、父母のこと、金持ちと結婚しようとしている姉。さまざまな出来事が起こる。
そして大切な気持ち。船乗りのオジさんから貰った双眼鏡で眺める景色と、遠い窓に佇む綺麗な人。
お父さんはこれまでの疲労がたたって倒れてしまい、否応なしに自分は魚屋になることを迫られる。
あるとき友達と、あの女の人の家を探すと、彼女がちょうど結婚して出て行くところにでくわしてしまう。
父は亡くなり、そして、友達は引っ越し、妹は大阪へ。
金持ちじいさんに嫁いだ姉はいつだって嫌な感じで、そして魚屋として主人公の人生は続く。さようなら、いろんなものに。
背中は寂しいようなたくましいような。これからもきっと生きてる。
友達との妙にくっついた友情は、クィア的といえばそうかもしれない(評論を先日立ち読みした)。ぼくとしてはどちらでもいいようにも思える。
美しい映画なのは間違いない。

『土佐の一本釣り』(1980・松竹、キティ・フィルム)

併映の『寅次郎かもめ歌』のマドンナが伊藤蘭。こちらのヒロインがスーちゃん。キャンディーズ二本立だった。ツッパリ見習い漁師としっかり者の女子高生の初恋に、前田監督は父親的視線を注ぐ。東映からあの方々も登場。途端に画面に緊張が走る。

ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)

 

監督:前田陽一

出演:加藤純平/田中好子/蟹江敬三/樹木希林/宍戸錠/加藤武

 

みずみずしい映画を観た。中学を卒業し、漁師になることにした加藤純平(これがまたなんともいい顔というか、地方の生意気ながきんちょって感じで作品にぴったり合っている)。幼なじみの田中好子のことが好きで好きでたまらない。
漁から帰って会いたいのは田中だ。海の男たちは長い船の生活のなかで、やはり会いたいのは女、である(途中蟹江敬三が逃げられた嫁を想って半狂乱になるシーンがある)。
娼婦は抱いても素人の女は一人だけ。加藤は田中と愛し合うことに(前夜の二人のイメージトレーニング、そして学校サボって警察に補導され、モーテルまでの流れがコミカルで最高)。
しかし、二人はすれ違い(エロい漁師の嫁さんに加藤が誘惑されたと勘違いしたり、田中がやめも男の世話をしたり)、あるとき琴平に漁師一行が出かけたとき、ヤクザと一悶着。それを知った田中は、加藤の無事を神様に頼むため、その集落の伝統を……。
船員たちも土佐の人々も優しい。こんな場所で、若者たちは伸びやかに生きていく。
観わってこんなにすがすがしい気持ちになるなんて!
いまどきありえない男尊女卑世界観ではあるんだが(笑)。

『おひとりさま 三十路OLの性』(2008・ネクストワン)

村上春樹の小説『アフターダーク』に触発され監督自身が脚本を書いた本作は、暗い退廃と残酷な暴力の匂いが漂っている。既に監督デビューしていた黒川幸則やカジノが演出部として協力している事や、日活の若手編集部の参加にも注目。

ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)

 

監督:工藤雅典
出演:友田真希/寧々/藍山みなみ/那波隆史/飯島大介

 

どこらへんがアフターダークなんだろうな、と思って観ていたら、たしかにこれは!

再開発事業に関わる女はかつて上司とデキていた。しかしいま、上司は同僚と……。

そしてポン引きの男と運命的な出会いをすることに。売春をしていると誤解され抱かれたとき、彼女は「自分を理解してくれる」と直感的に感じる。会いたければ売春して金をよこせ、といった男の言葉をまに受け、彼女は……。そして多発する暴力行為をし、相手の肌に傷をつける男の正体は……。

たしかに全体のムードは暗い。いや、エロってほの暗いものだったりするんだけれど、そういうレベルでなく、暗い。東京の闇のようだ。

そしてラスト、夜明けはやってくる。

女は結局「理解者」を手に入れることはできず、男は逃げようと部屋に戻ると、情婦がヤクザに……。

 

『進め!ジャガーズ 敵前上陸』(1968・松竹)

ビートルズ『HELP!』をベースにしたナンセンス喜劇。中原弓彦小林信彦)が脚本協力。007、『第三の男』、レオーネ、ゴダールと映画パロディ満載。後半、突如日本兵の生き残りが登場。途端、戦争映画と化すのに唖然。終幕までお遊び精神横溢。

(ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)

 

監督:前田陽一

出演:ザ・ジャガーズ/中村晃子/尾崎奈々/てんぷくトリオ/南道郎/三遊亭圓楽

 

2023年4月のラピュタ阿佐ヶ谷は、前田陽一監督特集でした。

www.laputa-jp.com

 

にしても、とりあえず一本観ようかな、くらいのぬるいテンションだったんですけど、前田陽一監督、最高です!

大人気のジャガーズ、コンサート終わりに間違ってシンちゃん拉致られる!

金塊の取引!? なにそれ? そしてちょうど入ってきたボンクラベルボーイの伊東四朗の二人は、謎の組織に追われることに!

なんだか謎の妨害をされ、ジャガーズたちも危ない目に。リフレッシュに雪山にいったときに芽生えた恋、そして愛する人の死。絶対に許さないと悪の本拠地硫黄島へ!

 

とあらすじを書くだけでは面白み伝わらないですよね。なにはともあれ悪党どもが愉快愉快、刑事? でナルシスト(なぜ『星の王子さま』読んでんのw)な若かりし三遊亭円楽

シンちゃんを想う、露骨な中村晃子さん!(しかもめちゃキュートじゃん)

とにかくキレたやつはいないがくわせものばかり!

あらすじにあるように後半謎に戦争ものに! 最後は悪役が気狂いピエロ的自爆! それ以外にもネタ多数(ちょうどシネマヴェーラ小林信彦の『世界の喜劇人』発売記念特集やってました!)。

 

いや〜舐めてました。最後に登場人物たちが上手から下手へ移動しながらのキャストロールもかわいい。ていうか露骨なロケ地讃歌にCM的うどんつゆ推し。笑った!!

 

『巨乳熟女 本番仕込み』(1993・獅子プロダクション)

(改題:菊池エリ 熟女の時間で…イッて!)

ビデオの「シスターL」で人気を得た元祖アイドルAV女優菊池エリ。バブル時代の女性を象徴するようなボディコン姿が眩しい。当時、批評家として頭角を表し始めていた切通理作が脚本。エクセスでは数少ない、伊藤猛の出演も貴重。

ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用)

 

監督:橋口卓明

出演:菊池エリ/井上あんり/伊藤清美/伊藤猛/山口健三/中川あきら

 

ラピュタ阿佐ヶ谷のエクセスフィルム特集である。

毎度のことながら、なんちゅ〜タイトルだ(改題も)と思うのだが、やはりタイトルに騙されてはいけないといいますか、かなり面白かった。

夫は海外赴任、自分も近日中に夫の元へ向かう予定の人妻が、友達に頼まれ会社のセクハラ早漏上司を退治(会議に乗り込む!)。大成功したら、今度は友達の友達の悩みも解決して欲しいといわれる。

というのも、旦那の浮気を疑っていて、女遊びをさせないように、誘惑して、ホテルにいって、旦那に睡眠薬を飲ませて、とっちめろ、というのだ。

さて、まんまとホテルにしけ込むが、睡眠薬が効かない! で、、、。

さて、ミッションは失敗だったはずが、実はまさかの友達が……。

後半の展開に「おお〜!」。最初の早漏上司も再登場、そして忘れられないセックスをした男との、、、。

と盛りだくさんで面白かった。

そして今回面白かったのは、舌。

画面にアップででてくる絡み合い、そして、舐めるときの動き!

いやー、ぞくぞくしました。

『逆境を乗り越えた大女優 高峰秀子の美学』

東京タワーで開催された、高峰秀子さんの展示にいってきました。

基本展示内容は撮影不可ということでちょっと残念。

https://www.takamine-hideko.jp/exhi

www.takamine-hideko.jp

高峰さんの著作を読んだ人はわかっていると思うのですが、高峰さんは幼少期に映画出演してからずっと第一線のスターとして映画界におりまして、本人は辞めたいとおもっていたけれど、家族の家計を支えなくてはならない(これもまたエグいんですよ)と女優を続けてきた、と。夫・松山善三さんと結婚するまでの苦難ぶりを、著作からの文章を交えて紹介しています。そしてさまざまな映像の抜粋が、とにかく楽しい!

「うわ〜かわいい〜!」「うわ〜!素敵〜!」が満載。この輝きの裏にあった逆境に、涙。

高峰さんの書斎やダイニングテーブルまわりの再現や、松山さんとの写真に、涙。

なんだか物販コーナーにたどりついたときには、ちょっともうおかしなテンションになってしまった(笑)。

思わずクリアファイル買ってしまった。

 

東京タワー、海外の観光客のみなさんがたくさん。どんどん展望台のほうへ。

高峰さんの展示は、夜にいったら落ち着いてゆっくり観ることができました。ゴールデンウイーク(5月6日)まで開催中ですので、ぜひ!