きたはら邦画

午前0時の旧作日本映画案内

『森繁のやりくり社員』(1955・新東宝)

ラジオプロデューサーの森繁はスポンサー獲得に奮戦中。家庭では働く妻と家事を分担しているが、家の主導権は徐々に妻に…。ドジでも金欠病でも明るく歌ってポジティブに生き奮闘するサラリーマン・ミュージカル・コメディ。高島忠夫杉葉子、久保菜穂子の他、東山千栄子千田是也らが本人役で出演している

シネマヴェーラホームページより引用)

 

監督:渡邊邦男

出演:森繁久彌/杉葉子/久保菜穗子/小笠原弘/髙島忠夫/曉テル子/新倉美子/遠山幸子/相馬千惠子/髙田稔/岡讓司/東山千栄子/千田是也/益田キートン/岸井明/阿部九州男/江川宇礼雄/中村彰/天知茂

シネマヴェーラ渋谷の「復活!玉石混淆!? 秘宝発掘! 新東宝のディープな世界」は、配信ではお目にかからない作品ばかりがラインナップされており、できるだけ、観たい! ついでに18本観たらあの!『名画座手帳』がもらえるらしい!

 

さて、森繁久彌の面白みを知ったのは、ラピュタ阿佐ヶ谷川島雄三特集だった。とにかくフッ軽、そして頭の回転が速い! どこまでがアドリブ? どこまで打ち合わせ? と思わせるその芝居の雰囲気が楽しくて仕方がない。

「森繁の」とついているだけあってやりたいほうだい。冒頭のナレーション(影の声)から家事をこなす森繁! どうやら家事も共働きの妻とお金を払う(貯金)することで「やりくり」している。そう、マイホームを建てるために倹約しているのである。

なので森繁、やたら同僚から金を借りる、年下の高島忠夫のタバコを吸う(笑)。

仕事ぶりはといえば、なんだかユーモラスなへまをやって笑わせてくれます。鳥の鳴き声を録音しに明治神宮に向かうも愚痴をたれていたら(これがすごくセンスいいんです)、そのテープをスポンサーに聴かせてしまったり。妻と電話で喧嘩をしているうちに、妻が職場の上司と変わったのも気づかずに舌戦! などなど。

ラスト、ラジオドラマに欠席者が! だったら自分でるわ、学生時代にやってたので、と森繁が生放送のスタジオに入り千田是也東山千栄子ともに脚本を読むのだが……! の千田是也とのバトルも最高。

冒頭とラスト、大学の同窓会でまとめているのも面白い。最初は羽振がいい(振り)の森繁だが、映画最後の再びの同窓会では欠席。同級生たちは「あいつは仕事が忙しいからな〜」なんて言っているんだが、実は一人で屋台飲み! かっこいいとかわいい、そしてうまい、鋭い森繁の「芸」。どんどん観ていきたい。